兄さんが兄さんでなくなってしまった。

傷ついてばかりのあなたを僕はただ見つめていることしかできませんでした。
何かは感じているようなのに、それが一向に脳に届かなくて、顔がぴくりと動くことすらなく、もちろん行動にもできない自分でした。
それが嫌でたまらなく、それでもどうしようもなく日々が過ぎてゆきました。

ただひとり肯定してくれたのはあなたでした。
あなたの温かな手が頭をなでてくれるその感触を忘れたことなどありません。
あなたは否定するどころか、それを偉いとまで言ってくれたりしました。
実際は何にも出来ない臆病なだけなのに。
自分の不甲斐なさと狡さと、それでもやっぱりうれしいのとが混ざって泣きそうになりました。それでもやっぱり涙は出ないのだけれど。

自分は無力でした。
あなたの傷は増えてゆく一方でした。

あなたの優しさが普通以上にあなたを傷つけてゆきました。
自分はそれをただ黙って見ていました。

そしてあなたは、兄さんは兄さんでなくなりました。
その日、あなたの髪は鮮やかな金色に染まっていました。

自分とあなたは交わることはなくなりました。
誰も決してあなたと交わることが出来なくなりました。
あなたのそばに人間は存在できなくなりました。
あなたの優しさが、あなたすべてを引き換えに、人々を守っていました。

自分はあまりの無力さに、今度はとうとう本当に泣いてしまうと思いました。
けれども結局自分は無表情でしかなく、そんな自分がおぞましくありました。

あなたが偉いと、そう言ってなでてくれたのに、そんなことはなくて、自分はただただ狡いだけでした。


傷つくことすら不可能な孤独の時間があなたに過ぎてゆきました。
それは絶対的不可侵の領域です。
それは絶対的不可侵の領域、だったのです。

気づけばあなたの隣にはただひとりの人が居ました。
美しい黒髪の、闇のように深い目を持つ、どこか恐ろしい男が悠然とこちらに微笑みかけてきました。

兄さんは兄さんでなくなりました。
あなたは全てでなくなりました。
まるで余計なもの何もかもが存在しないように兄さんの魂が彼に抱かれるのを感じました。

兄さんは再び自分に柔らかく笑いかけてくれるようになりました。
その笑顔を思うと何も考える前に頬を涙が伝ってゆくのを知りました。

うれし涙かかなし涙か自分でもさっぱり分からないけれど、さみしいという気持ちだけは確かにここにありました。




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なんだこれ!
確か幽くんはシズちゃん反面教師でわざと感情を抑えてるはずで、こんなことはありえなry
ごめんね(^ω^)!







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