※来神時代

※臨也がいつにもましてダメな子
 日本語すら正しくない






帰り道の途中、コンビニの前で、臨也が一歩も動かなくなった。アイスと連呼する。何を言っても返事はアイスだ。押し問答をはじめて、五分余り。俺が折れた。あまりに暑くてこれ以上は色々と無駄な気がしたからだ。
だいたい駄々をこねはじめた臨也の気を変えられたことなど未だない。



「安いやつな」
「へへへーシズちゃんありがとう!」

こんなときだけ無邪気に笑ってくるから思わず許してしまう俺も甘いんだろう。
ガキみたいに目をきらきらさせて冷凍庫をのぞきこむ姿に思わず頬がゆるむ。
臨也はしばらくの間うんうん悩んだ末、これだ!って叫びながらやっとこっちを向いた。

「おい、何だそれは」
「新作だよ!抹茶クッキー味のハーゲンダッ」
「安いのな」

臨也が言い切る前にもう一度釘を刺す。臨也が嬉々として持ってきたのは、俺が知る限りの最高級アイスだ。

「だからこれ、」
「ほらこっちのガリガリするのとか」

目についた親しみ深い良心価格のアイスを差し出す。「けち」
「買わねえぞ」買ってもらう分際で何がけちだ。一度くらいなら、まあ買ってやってもいいのだが、やっぱり味をしめられたら堪らない。毎日そんなもの買い与えていたら俺は破産するぞ。

「やーだ」
「だめだ」
「…あ!俺実はこの抹茶クッキーを食べないと死ぬ病なんだ」
「あほか」

なんだその良いこと思いついた!みたいな顔は。流石に騙されねえぞ。

「死ぬ死ぬ死ぬシズちゃんのせいで死ぬ!」
「静かにしろ!」

ああああ注目されてしまっている。公共の場で喚きやがって、お前はいくつだ。

「しぬー、しぬー」
「…はあ」

しょうがない、黙らせるには買うしかないんだろう。
臨也から小さなカップを奪いレジに並ぶ。

「待って!」
「何だよ、やっぱりガリガリするやつにするか?」

今度はなんだ。もう1つとか言ったら絞め殺すぞ。

「違うくて!シズちゃんのは?」

俺の?アイスってことだろうか?

「いらね。金ねえし。」
「だーめー!」
「なんでだ」

臨也は打って変わって焦ったみたいに俺のシャツの裾を引っ張ってくる。身長差的に上目使いの状態で、いや、べつにそれはどうでもいいんだけど。
今度は何が不満なんだまったく。

「一人で食べて何が楽しいの?嫌がらせか!」
「はあ?」
「はいガリガリさんソーダ味」

臨也は目についたのか、さっき俺が手にとった良心価格のアイスをよこしてきた。
俺がどうしたものかと途方に暮れていると、シズちゃんと怒った声で何故かじっとり恨めしげに睨みつけられる。何かこれじゃあ俺が悪いことしてるみたいじゃねえか。
まあこれなら買えなくもないし、食べたくなくもないようなそうでないような。

「…分かったよ」

結局、全部こいつの望み通り、臨也の高級アイスと自分用の庶民アイスまで買う羽目になった。
全くこいつはどこまでわがままなんだ。



まあそれも可愛いと思ってしまう自分は相当重症なのだけど。












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