※臨也にはあはあごほごほ 言わせたかっただけ ※超短文 ※family設定かもしれない 隣で寝ている臨也さんの具合が悪くなったようですよ。そのとき静雄さんは? →狸寝入り静雄 →いつまでもわたわたする静雄 →いじめっこ静雄 →慣れている静雄 1.狸寝入り静雄 乱れた呼吸が隣から聞こえる。 臨也が発作を起こしたようだった。ひゅーひゅーと危うく繰り返される、それは呼吸とは呼べないようなものだったけれど。 俺には何もできないので、何もしない。唯一出来ることと言えば、何もなかったふりをすることぐらいだけだろう。 いつかは、この距離が変わるのだろうか。試しに、隣で寝返りをうってみるけど、臨也の手がこっちに延ばされることはなかった。もっと俺が頼れるような人間だったなら、こんな風ではないだろうに。でも、俺は何にもできないのが現実だから。じわじわと、閉じているはずなのに、眼球が熱くなってきて、臨也にこれだけは気づかれまいと、唇を強く噛んでおいた。 ▲ 2.いつまでもわたわたする静雄 「いざや!?」 「はぁはあ…げほっごほげほ」 「だ、大丈夫か!?く、くすり、救急車!?」 「だ、ぃ…じょぶ、だか、ら、」 笑われてしまった。それどころじゃないだろうに。 それにしても、俺はつくづく臨也のこの言葉に弱い。 「大丈夫なんだな…」 本当かよ、これ、大丈夫なのか?どうしたらいいんだ? それでも、臨也の言葉だけは信じることにしていた。大丈夫じゃないときは、そう言うやつだし。 俺にはどうしようもなく、とにかくそれ以外に何も思いつかないので、思いっきり抱きしめておく。咳をするたびに腕の中の身体が震えて、その都度びくびくしてしまうのだが、当の本人は特に抵抗するでもなく、俺のシャツをつかんで、胸に顔をうずめてくるので、これで正解なんだろう。そう自分に言い聞かせてもう一度強く抱き寄せた。 ▲ 3.いじめっこなしずお 「あのよ…、息切れしてる奴ってエロいよな…」 「はっ?!し、ね!ごほっげほげほ」 「いやいやまじで」 なんなんだこの男は。真顔で何を言ってるんだ。人がこんなに苦しんでるってのにさ! 人間性を疑うね、まったく! 「そうだ、こういうのはどうなんだ?」 「え……?」 なに、なに、ちょっと待って、 「そ、れ、いやっ」 「まあまあ」 まあまあじゃねえよ!折角おさまってきたのに、シズちゃんが出したのは紛れもない煙草だった。 「うぁ、やめっ…ひっ……ごほごほごほっげほげほ」 「おおお、すげえ」 本当信じらんない!こいつ人が苦しんでるとこに煙を吐いてきやがった。 「し、ね!!!!」 ありったけの力で蹴っ飛ばしてみた。シズちゃんはにたにた笑ってるだけだった。この変態め! ▲ 4.慣れてる静雄 春が近い。そんな匂いのする夜だ。いつまで続くのだろう、なんて思うのを止めたのはいつからだったか。 「はぁっ、はあっ、は」 「臨也?」 やけに風通しが良いものだから、目が覚めてしまった。どうやら密着していたはずの臨也が、離れたかららしい。 こんな事でいちいち起きていたら臨也は気にするんだろうが、俺だって気にしない方が気になる訳だからお互い様だ。 「だいじょーぶか?あ、くすり?」 寝ぼけた声しか出なくて、自分で自分にびっくりした。 臨也はいつもの発作が起きたみたいで、まあ薬を吸入すれば治まるだろうけど、薬を取りにここを離れたようだった。それはこちら側の棚にあるのだ。さすがに俺がとってやろう。 ベッド脇の棚に手を伸ばして、引き出しをごそごそすればすぐにそれに行き当った。 「ほれ」 「…っ、はぁ、…っ、ごほごほごほっげほっげほ」 慣れたもので、何ら滞りなく臨也に薬が吸い込まれていく。 これであと10分か20分もすれば治まるだろう。そんなにひどくもなさそうだし。 俺の横に体育座りで丸まって、はふはふと息を続けている。 窓を見れば、ほんの僅かに、空の白んでゆく気配を感じた。時計を見れば4時を過ぎたころだった。二人で眠りについたのは2時過ぎだったはずだから、2時間か。 「…はぁっはぁっ、ふ、は、げほごほ」 ぎりりと強く握られるシーツがくしゃくしゃと形を変えていく。それを見ていいのか、目を逸らせばいいのか分からなかった。 慣れてしまうのは、怖い。 ▲ |