「トキヤは運命って信じる?」

「運命ですか?」


夜、特に体を繋げた後、一つのベッドの中。音也の心が緩まりやすい夜の隙だ。

「それはどういった意味で用いているかにも寄りそうですね」

運命。言葉の響きだけで考えると使い古されたようなセリフがいくつも浮かぶ。

「人がどうなっちゃうかはもう決まってて、変わらないって。信じる?」

「…それはないと思います。少なくとも努力で自分を変えることは出来ます」

「トキヤらしい答えだね」

音也は寂しそうに笑った。もちろん出来るならばそんな声を出させないような答えを出したかった。それは叶わなかった。けれどこれは本当の音也だから、下手にうまく笑われるよりかはよっぽど良い。こういう時はチャンスなのだと自分に言って聞かせて慎重にかつ細心に耳を傾ける。

「音也は、どう思いますか?」

「俺は……分からない……けどね、そんなものがあったらやだなって、思ってたから、良かった」
「良かった?」
「トキヤが居てくれて良かった」


こんなにも簡単に優しい言葉をくれるのに。

「音也」
「なあに」
「愛していますよ」
「俺も、大好きだよ」
「ずっとそばに居てくださいね」

確かな言葉は決して口にしてくれない。
それでもいい。まだ何も返って来なくても、私が届け続ける。しつこく語り続けて音也がいつか絶対を思わず信じてしまえばいい。


運命って信じる?


音也はやはりどこかで信じているのだろうか。
それはどんな運命なのだろう?
例えば運命があったとしてそれが変わることはあり得るのか。もし音也が運命に縛られているというのなら。


離れない。それを私達の運命にすれば良い。

ふとそんな事を思い付いて私は口を開いた。



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一十木音也を泣かせる方法





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