「凪沙殿、何やら嬉しそうでござるな」

毎日の日課である幸村さんとのおやつタイム。縁側で二人でお茶と佐助さん特製三色団子を戴く。うん、今日も美味しい。

「ふふ、そうですか?」

「先程から笑っておられるようだが……」

「ふと思い出したことがあって」

そう言ってお茶を一口すする。ニコニコしている私を見て、幸村さんは不思議そうに首を傾げる。

「頭を撫でてくれるのは謙信様、抱っこしてくれるのはお館様、手を繋いでくれるのは佐助さん、抱きしめてくれるのはかすがさんが多いから」

「なっ……!佐助はそんなことをしているのか!」

城下に行くときだけですよ、と言うと、幸村さんは最後の団子を食べずにじっと見つめていた。それから、ぽつりと呟く。

「某は………」

「………幸村さんは、すぐ破廉恥って言って、私に触れようとしないじゃないですか」

その時、ガシャンと湯飲みが割れる音がして、視界がぶれた。肩を押されて床に組み敷かれる。

「やっ、幸村さんっ………」

「ならば、此処は某だけが触れていいことにしてくれぬか……」

そう言って、幸村さんはお茶で少し湿った唇を塞いだ。普段破廉恥と叫んでいる人とは思えぬほどの甘い口付けに、私は幸村さんの服にしがみつく。目を瞑り、声を漏らさぬようにするので精一杯だった。

ちゅっ、と音をたてて離れた唇。そっと目を開けると、幸村さんは眉を潜めて苦しそうに私を見下ろしていた。

「好きだ、凪沙」

頬を撫でるその手の熱さに、火に油を注いでしまったと後悔するのも遅かった。



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