第2奏



セレネside


一次試験が始まった。

先ほどのスーツ姿のダンディな紳士は、サトツさんと言うらしい。一次試験の内容は、サトツさんの後を着いていくというもの。
しかし、何処がゴールなのか、どれくらい時間がかかるのか等の情報を一切伝えられていない。

つまりこの試験は、そんな不安な状況でも冷静でいられるか、又そこまで着いて来られるだけの体力を持ち合わせているのかを試す為の試験なのである。
開始から30分で、既に脱落者が次々とでている。この試験を甘く見過ぎていた人達だろう。

「そういえば、さっきからレイが見当たらないなぁ」
「どうした?」
「うーん、レイって子が試験に参加してる筈なんだけど」

僕はゼロにレイの事を説明すると、ゼロは一瞬無表情になり暫く沈黙が続く。

「………ま、その内見つかるさ」ニヤリ
「今の間は何?」
「あれ?女が受けてるって珍しいな」
「「!」」


僕達の後ろから声をかけてきたのは、スケボーに乗った銀髪の少年だった。なんかレイに似てるなぁ……髪や目の色も同じだし、猫目な所も。
まさかレイが念で化けて………いやナイナイ。そもそもレイはスケボー乗らないし。

「俺と同い年くらいの奴が受けてるだけでも珍しいのに………まさか、間違えて来たんじゃねぇよな?」
「いやいや、ちゃんと試験を受けに来た受験生だよ。っていうか僕を何歳だと思ってるの?」

失礼極まりない事を言ってきた少年に、自分は一体何歳に見えたのかを問う。

「え、俺と同じ12じゃねぇの?」


……どうやら少年には、僕が12歳に見えていたらしい。


「なッ……僕は16歳だよッ!!」
「は?16?12にしか見えねぇよ」
「あっははははッ!!12にしか見えねぇってよ!俺と同じこと言ってるぜ!!あはははは腹痛ぇッ!!」
「〜〜〜〜あぁもう笑うなぁぁああッ!!」
「はは、ワリィワリィ!ちょっと苛め過ぎたな。俺キルア、あんた達は?」
「俺はゼロ、コイツと同じ16だ」
「僕はセレネだよ、宜しくキルア!!」ニコッ
「ッ………!!」

僕がキルアに笑いかけると、何故か茹で蛸の様に真っ赤になったキルア。あれ、風邪かな?子供は風の子って言うけど油断しちゃ駄目だよ。
ゼロは何か悟ったのか、キルアを見てニヤニヤしている。

「(お……?)へぇー、ふーーん?」ニヤニヤ
「コッチ見んなッ!!つかなんだよその顔ムカつくッ!!」



「おいガキ汚ねーぞ!!そりゃルール違反じゃねぇのかオイッ!!」


キルアに向かって怒鳴ってきたのは、スーツで背の高い男だった。20代前半くらいかな……?短気そうだなぁ、もし念覚えたら絶対放出系だよねこの人。
短気で大雑把な人は放出系なことが多いってお兄ちゃんが言ってた。

「なんで?」
「なんでってお前ッ…!!これは持久力のテストだぞッ!?」
「違うよ、試験官はついてこいって言っただけだもんね」

とノッポ男に言ったのは、男の隣にいた黒髪ツンツン頭の少年だった。

「ゴンッ!!お前はどっちの味方だ!?」
「あれ、ゴン?」
「え?……あ!セレネだー!!」ガバッ!!
「うわあッ!!」


「「「「!?!?」」」」


黒髪ツンツン頭の少年……元いゴンは、僕の方へ走って来てガバッと抱き着いて来た。僕は後ろへ転びそうになったのをなんとか踏み留まる。

「久しぶりッ!!最近家に居ないから心配してたんだよッ!?」
「あはは、ゴメンゴメン。仕事が忙しくてさ」
「ゴン、知り合いなのか?」

と、中性的な整った顔立ちの金髪美人がゴンへ問う。

「うん!セレネっていってね、俺の住んでるクジラ島の森にある家で暮らしてて、よく遊びに行ってたんだッ!!」
「と、いうわけでセレネです。宜しく!」

金髪美人さんとノッポ男の人に自己紹介をした。
「お前年いくつ?」とキルアがゴンに問い、ゴンは「もうすぐ12歳ッ!」と元気な声で答える。

「ふーん、そっちの女は?」
「なッ…!私は男だッ!!」

金髪美人さんは、キルアに女と言われて怒りだす。

(え……男だったの!?)

「ゴメン、僕も女だと思ってた…」
「右に同じく…」
「お前らもかッ!!」

どうやらゼロも僕と同様に女だと思っていたらしく、金髪美人さんに二人で怒られた。

「ハハハッ!!面白ぇなお前ら!!やっぱ俺も走ろっと」

キルアはスケボーの端を足で踏み宙へ飛ばし、それをキャッチしてからゴンの隣に並んだ。

「カッコいいッ!!」
「へぇ、やるな」

ゴンとゼロがそれに素直な感想を述べた後、キルアは自分の名を名乗る。

「俺キルア」
「俺ゴン!」
「私はクラピカだ」
「俺はゼロ」

それぞれ自身の自己紹介をし、キルアはノッポ男に名前を聞く。

「オッサンの名前は?」
「オッサ…これでもお前らと同じ10代なんだぞ俺はよぉッ!!!」

「「「「ウッソォ!?」」」」

ゴン達は驚いて大声を出す。あまりの衝撃に思わず僕も叫んでしまった。

「あーゴンまでッ!!ひっでぇもう絶交なッ!!」
「だってオッサンとても10代には見えねーよ」
「僕てっきり20代前半くらいだと…」

キルアと僕がそれぞれ思っていた事を言うと、ノッポ男は「俺はまだ19歳だッ!!!」と叫んだ。

「セレネ、お前も人の事言えねぇぞ?そのナリで俺と同じ16歳とか…」
「はぁ!?俺12だと思ってたぜ!?」
「すまないセレネ、私もゴンと同じ年齢だと……」


どんだけ子供に見られるんだ僕は。


「むううぅ……いつかでっかくなって皆を踏み潰してやるぅうッ!!!」
「どんだけデカくなる気だよッ!?」

僕が踏み潰し発言をすると、ゼロのツッコミが入った。

「で、結局オッサンの名前は?」
「キルア、オッサンって……」

19歳だと知ってもオッサン呼びをやめないキルア。

「ハッ!!お前には絶対教えねぇよッ!!」
「レオリオだよキルア」
「いちいち教えてんじゃねぇよゴンッ!!」
「お前ら漫才かよ…」

三人の会話を聞いてゼロは思わずツッコんだ。



††††††††††††††††††



あれから、僕とゼロは先頭まで走ってきた。
さっき後ろから「絶対に受かったるんじゃぁああクソッたらぁああッ!!!」というレオリオの大きな声が聞こえてきた。
元気いいなぁ……僕も頑張らないと。

「お、出口見えてきたぞ。」
「ホントだッ!出口… ドドドドド が……え?」

後ろを見ると、キルアとゴンがもの凄いスピードで此方へ走って来ている。

「先にゴールするのは俺だッ!!」
「違うよッ!!俺がキルアより先に…「いいからお前ら前見ろ前ッ!!!」え?……あッ!」

キルアとゴンがふと前を見ると、もう僕達のすぐ傍まで来ていた。

「あッ!じゃないよ早く止まってぇええッ!!!」
「急に止まれるわけねぇだろうがぁああッ!!!」


ドォオオンッ!!!


トンネルを抜けた瞬間、僕達はキルアとゴンに後ろから突っ込まれて4人共倒れた。

「いっつー………なんで前見ねぇんだよ」
「ごッごめん!!キルアと張り合ってたらつい!!」
「いってぇー………ワリィなセレネ、今ど…く………ッ!?」
「ん…?キルアどうし………ッ!?」


(ち……近いッ!!)


ふと今の体勢を見ると、キルアが僕を押し倒している様な構図になっていて、お互い赤面し慌てて離れる。

「ご……ごごごごめんッ!!!」
「へへへ平気だよ!!大丈夫ッ!うんッ!!」

ビックリした………顔を上げたらキルアの顔が目の前にあって、思わず同時に飛び離れちゃったよ。
お互いの顔が目の前にあったら誰でも赤面するよねッ!!キルアもそうだし、うん!!

「おいおい、そんなんでこれから先大丈夫かよ?」ニヤニヤ
「はぁ!?なっ何の話だよッ!!」
「?」

ゼロはキルアの反応を見てニヤニヤしていたが、僕はそのワケが分からずずっと頭にハテナを浮かべていた。
そうこうしている間に段々人が集まってきて、サトツさんは全員にこう言った。

「ヌメーレ湿原、通称詐欺師の塒。十分注意して着いて来て下さい、騙されると…………死にますよ」


To be continued……



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