世代交代



私、両親にあまり思い入れがないんです。
お父様達はいつも仕事優先で、私と会う機会なんて殆どありませんでした。たまに来て下さったかと思えば、お母様だけが来てお金と服だけ私に握らせて、二言話しただけで去っていくんです。
私は小さい頃から、そんな両親に「自分は必要とされていないのか」と、ずっと疑問を抱いていました。でもお父様達が死んでしまった今、その答えが解ることはもう一生ありません。
だから、もし私に子供が産まれたら……沢山遊んであげるって、決めているんです。
私と同じ様な思いは、してほしくないから……



────……



「……と言っていたわりには、呆気なく死んでしまいましたね。」

ザアァ……と風が吹き桜が舞う中、メフィストはお墓の前で呟く。「悪魔が花を贈るのはどうかと思いますが…」と言いながら、メフィストはミヤコワスレの花束をお墓に供えた。

「やはり人間は脆いな、私が少し様子を見ない間に同期生に殺されて……………本当に、人生は何が起こるか分かりませんねぇ」

「では、御暇させてもらいましょうかね」とメフィストがクルリと背を向けると、背後から風が吹き、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「〈ありがとうございますフェレス卿、お花綺麗ですね〉」
「…………態々霊に憑依させてまで現れなくても良かったんですよ、一華さん」
「〈フフ、嬉しかったんですよ。フェレス卿が人間のお墓参りに来ることなんて、そうありませんから。…………娘達のこと、宜しくお願いしますね〉」
「まぁ貴女にはこれまで楽しいショーを見せてもらいましたし、悪いようにはしませんよ。これから二人とは長い付き合いになりますから」
「〈本当に、ありがとうございます。私達はもう、見守ってあげることしか出来ませんから。……………フェレス卿〉」
「なんです?」
「〈フェレス卿が新郎のタキシードを着ても、普段とあまり違和感なさそうですね〉」
「……は?え、それはどういう……ッ!!」
「〈あの子達を泣かせたら、私枕元に立っちゃいますからね♪それじゃあフェレス卿、またいつか……来世で会いましょう〉」

メフィストが振り向いた時にはもう遅く、言葉の意味を聞く前に一華の気配は消えてしまった。メフィストは、先程まで一華がいたであろうお墓をジッと見つめる。

「………何故そんなことを言って還ったんでしょうかねぇ貴女は、気になって仕方がないじゃないですか。まぁ良いでしょう、何を言われようと主は貰う気でしたし………また会いましょう、何処かで。きっと貴女のことだからひょっこり現れるんでしょうね、ですから……」


それまでどうか、安らかに。


そう言ってメフィストは帽子を取り、深々と一華の墓へお辞儀をした。



Coming soon…
*H27.6/21 執筆。



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