魔神との契約



メフィストside


昨日は色々な出来事が起こりすぎた。
まず一つ目に、一番恐れていた事……あの藤本がサタンに憑依された事だ。
その事を聞いた時、私はもう藤本は助からないと思っていた。誰だってそう思うだろう、サタンが…父上が憑依したとなれば、殆どの人が死ぬのだから。
しかし藤本は生きていた、これが二つ目。魔障専門病院に運ばれたと聞いた私は急いで藤本の元へ向かった。
そこにいたのは病室のベッドで堂々と寛いでいる藤本、その息子である奥村燐と奥村雪男、そして我が小さな主セレネとその姉レイだ。
そこまでは予想の範囲内だ、藤本がピンピンしているのには少し驚いたが。しかし、そこには予想外の人物……いや、猫又がいた。
その猫又は昔私がセレネにプレゼントした縫いぐるみにそっくりだった。また飼う悪魔が増えるのかと溜め息をつきそうになったが、私は“ソレ”に違和感を覚えた。

(父上……?)

そんなまさか、居るわけがない。
父上は物質界に長時間滞在することは不可能な筈だ、この世界に父上に合う器は存在しないのだから。
なのに……なのに何故、その父上がこんな所に居るのか。しかもセレネの頭の上に。
父上は私の視線に気づき、チラリと此方を見てニヤニヤしている。

「あ、メフィストやっと来た!」
「………すみません、上への報告書に追われていまして。なにしろあの聖騎士である藤本がサタンに憑依されたのですからね。上は今大混乱ですよ。」
「いや〜ちょっと隙を突かれてなぁ……だからそんな顔で見るなよメフィスト、ごめんって怖ぇよ」
「藤本さんの日頃の行いが悪いからこんな事になるんですよ、少しは反省して大人しくデスクワークをこなしなさい。」

そう言って藤本が怪我をしているにも関わらず、剣の鞘で頬をグリグリしているレイを見ていつもなら思わず笑ってしまうのだが、今回はそうはいかない。

「すいませんフェレス卿、うちの父が…;」
「良いんですよ、彼のこういう所は今に始まったことじゃないんで」
「なぁ、俺だけ話に着いていけねぇんだけど;
聖騎士ってなんだよ、あとコイツ誰?」

奥村燐は周りの状況に着いていけず、頭にハテナを浮かべている。

「お前には後でゆっくり説明してやるから今は黙ってろ、話がややこしくなる。雪男、レイ…お前らは燐を連れて先に帰ってろ、ちょっとコイツと話があるんだ」
「それはいいけど……父さん、話って…?」
「………………分かりました、雪男行こう。ほら燐も」
「ちょ、おい待てよッ!!」

レイは藤本に理由を問いただすこともなく、私達の空気を察して奥村兄弟を連れて外に出て行った。

「……………さて、どういう事か説明してもらいましょうか?藤本。」
「やっぱりお前には分かるんだな………この猫又がサタンっつーこと」

藤本はセレネの頭上にいるサタンを指差してそう言った。
大抵の悪魔ならサタンの存在に気づくだろう、隠そうにも隠しきれない魔神の威圧感で。いや、隠す気も更々無いようだが。現に今サタンは堂々としており、暇そうに欠伸をしている。
藤本はこれまでの経緯を話してくれた、セレネが自身に憑依したサタンと接触したことや、自身を助ける為に契約を持ちかけたこと、サタンの器を作ったこと等。
それらを聞いた私はセレネに向き直り、説教をする体勢に入る。

「主ッ!!貴女って人はッ………もし失敗したらどうするつもりだったんだッ!!殺される所だったのだぞ!?いくら不老不死になっているとはいえ、父上に攻撃されたら一溜まりもないッ!!しかも私以外の者と契約などッ…!!」
「いや最後のは別に良いよねッ!?;手騎士なんだから契約してなんぼでしょ!!それに使い魔の契約じゃないし!!」
「何言ってるんですか!私という者がありながらッ!!」
「そんな浮気を知った妻みたいな言い方やめてッ!?;」
「おいお前ら話脱線してるぞ!?;」

藤本の一声にハッとし、お互いに暫し無言になる。
セレネの頭上にいる父上が私達のやり取りに笑って『お前ら夫婦漫才かよッ!!』と言っていたが無視だ、全ては貴方のせいなんですからね父上。

「兎に角セレネ…貴女が無事で良かった」
「うん……ごめんねメフィスト、心配かけて」

そう言ってセレネを抱き締めると同時に、父上はストンと床に降りて人型の姿になった。今私達に挟まれていたからだろうか、凄く嫌そうな顔をしている。

『お前ら俺を挟んでハグしてんじゃねえよ暑苦しいッ!!リア充見てる気分になるだろ爆発しろッ!!』
「って父上なに平然と人型になってるんですかッ!!誰かにサタンだとバレたらどうするんですッ!?」
『いいじゃねぇかよ、どうせ俺の容姿知ってる奴なんて誰もいねぇんだからよォ』
「ていうかサタンの容姿初めて見たよ、燐兄とメフィスト達兄弟を足して2で割った様な顔だね。」
「いやその説明訳分かんねぇよセレネ」

父上は私の発言に面倒臭そうに頭を掻き、藤本はセレネの例えにツッコミを入れている。
……聖騎士が目の前にいるというのにこの人ときたら。

「やれやれ、先が思いやられるな…」

私は父上の顔について未だ口論している三人を見て、深い溜め息をついた。


To be continued…
*H26.11月16日更新。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -