―――ゆっくりと目を閉じて、


目の前で起こった事態を理解しようと試みる。でもでもでも、理解できない――
どうしてなんで、



貴方がしんだの



安形と待ち合わせたのが2時間前。派手に寝坊した私は、彼に遅れるとメールを打ちつつ片手で髪をセットした。
癖っ毛がまっすぐにならなくて、イライラしながら髪をちょっとだけ巻いて、いい感じにセットし終えたのが45分前。
それから洋服を抱えて鏡の前に立ってモデルみたいに回転してみたの。多分20分前だった。

そういえば、彼から誕生日にもらったワンピースに合わせてコーディネートした衣装にどうしても合わせたいヒールを探してタンスの中身を部屋中に散らかした
ままだ。
…ええとそれから、タクシーを飛ばして待ち合わせ場所に向かったのが10分前。なかなかタクシーが来なくて苛々しながら歩いてたら、標識にぶつかりそうになってなんだか情けなくなった。
そして、ようやくあの場所についたのが5分前。いつものカフェは丁度道の反対側にあって、私はそこを渡りたくてその場で小学生みたいに手を挙げた。何台か通りすぎた後、優しい運転手さんが止まってくれて私はそこを渡ろうと一歩踏み出して。


すると私が来たことに気づいた安形が道路の向こう側で私を呼んで私はそれしか見えなくなって―――



あぶない、



彼の口が確かにそう動いて、でも私には突っ込んできたトラックを避ける術などなく足を止めて、息も止まって、目を閉じて、



そしたら。



耳をつんざくような破壊音がして、それからようやく痛みを感じて、



でも。



跳ねられたのは私じゃなくて私を庇って道に飛び出した安形の方だった。




「…い、み。わかん、ない…よ」



小さく呟いて彼の手を握るとまだ僅かに温かくて。でも、優しく包み込んだ手首は脈を打つのを完全に止めていた。どうして。私がいけないのに、私が私が私が私が、



彼が誕生日にくれた真っ白なワンピースは赤く染まってしまって、走りづらくて脱ぎ捨てた靴はヒールの部分が取れてしまっていた。お気に入りだったのにこんなんじゃもう着れないよ。こんなんじゃもう履けないよ。



ねえ、安形私は誰に文句を言ったらいいの。
貴方でしょうねえそうでしょう。
頭のいい貴方なら分かってるよね私が誰よりも自己中心的で物事を解決するときに誰かのせいにしたいってこと。

だから私は

私は貴方が必要なの、

大好きな大好きな貴方が必要なの――


だからお願いよ、



返事をして




デタラメなラブソング

(ラブソングのような永遠なんか存在しないんだと、)
(今更になって気づいたの)




*************
白黒様へ提出。
ほとんど女の子の独白w
イメージは走馬灯です。