18 腰(束縛) トレイとシンク

事後描写があります。ご注意ください。


bruler

雨足は衰える事無く
一定のリズムで屋根を打ち続けている

雨どいの溢れる音が、まだ穏やかになってきたものの
きっと今日一日は日の目を見る事は叶わないのか
陰鬱な黒い空が
窓の外の景色すべてを覆い尽くしている


体もどこかしら重たく感じられ
外に出られないと決まれば
いっそ清々しく部屋で過ごすしかないと切り替えれば良いが

いつものように建設的に
何かしようとも思えないトレイがそこにはいた

「あの読みかけの本を開く気にもなれないのは……」

ずっと気になっていた本をようやく借りる事が出来たのに
最初の一章までも読み進めない内に邪魔をされ
彼は夕べ、続きのページをめくる事を断念したのだ

今寝息を立てているその犯人は
彼が読書をしていようとお構いなしに
じゃれついてきてしまうからだ

「人の読書の邪魔をしておいて、いい気なものですね」

蒸し暑いわけでもないのに
彼女は毛布をはだけるようにして、寝返りを打った

明け方まで求め合った形跡がそこかしこに散り
ベッド上の彼女も、紅いうっ血が首筋に、胸元に
色づいてしまっている

そんな彼女を眺めてから
トレイはコップに汲んだ水を飲み干して
ベッドサイドに近寄った

気配を感じてはいるはずが、シンクは起きる様子もなく
トレイはさらに恨めしそうにため息をつき

若い娘にあるまじき無防備さで
乳房を露わに眠っている彼女に毛布をかけなおそうとした

「あんなに激しく求めたから……疲れているのですか?」

少し後悔を孕んだ気持ちで
返ってくるはずのない返事に向けて
トレイは呟いた


いつもは清廉なイメージの彼も
愛らしい彼女に求められて断るほどの理性は足りず
つい乱暴に求めて、彼女を果てさせてしまったのに

夕べは歯止めが利かず、果てたままの彼女を
さらに求めてしまった

「貴女が悪いんですよ……?」


潤ませた目で応え続ける彼女に
何度も何度も腰を打ち付けて
名を呼んで、荒い呼吸のまま口づける

そうまでして繋がっても
一晩経てばまた彼女はけろりとして
愛らしいおどけた表情で皆の輪に戻るのだ

どれだけ自分の物だと痕を残そうとしても
トレイの腹の奥底で、独占欲が渦巻いても

ある種獣のように求め合えるのは
ベッドで過ごし、交わっている時間だけだと
トレイは確信せざるを得なかったのだ


「どんなに乱れても……貴女は決して汚れない」

快楽を求めようとする彼女も
いつものようにおどけて見せる彼女も
自分にとっては一人の女性なのに……と


トレイはその一晩のみの束縛で
満足しきれない想いを全てぶつけるように
彼女を抱いたのだ


「酷い人です……本当に……」

愛している彼女への気持ちをどうにかして伝えても
彼女がそれをまともに受け止める事が出来ないのは
もはや仕方のない事だというのに

シーツの上で寝息を立てる彼女は
夕べ愛し合った痕を隠すことなく

トレイは独占欲が満たされないまま
悶々とした心と闘いながら彼女を見下ろしていた

「っへっくしゅ……っ!!」
「……っ!?」

さすがに全裸で眠っているのだ
何もかけない肌寒さで、シンクがくしゃみをした

呆気にとられたトレイは
脱力した表情で、そっとシンクに毛布をかけながら
自分の中の冷静さを呼び起こそうとした

そして、彼女の白い腰にそっと
口づけを落とす


「勝手な人ですよ……本当に」

行き場の無くなったボヤキ文句に
内心腹を立てながらも

トレイはそのまま
眠るシンクの横に倒れこみ
どうにも読めそうも無い本を手に取って
恨めしそうに寝息の発生源を睨んで苦笑した

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