12 腕(恋慕) レムとマキナ

事後描写があります。ご注意ください。


bruler

窓の外から、何かが飛び立つ羽音がした

レムはしかし、既に目を覚ましてしまっており
黒い翼を広げて飛び立つ
カラス達の声をずっと聴いていたのだ

横で眠るマキナが
先ほど寝返りを打ったことで
被っていた毛布の半分を奪われたからだ

「……寝相悪いなぁ」

そうはいっても、怒るでもなく
眠るマキナの横顔を横目に微笑むと
床に散らばった着衣を拾うために
レムはベッドから足を床におろした

夕べ激しく求め合った痕跡が
あちこちに散らばっている

着衣として、ベッドの周りに
そして、紅い痕がレムの体のそこかしこに

その痕の一つ一つを
机の横にある壁鏡で確かめながら、レムは指先でなぞる

乳房に三か所
腹部も、臍回りにみられるだけで五か所

太ももから膝にかけては何か所あるか、鏡ではわからない

その痕の一つ一つを
どうやってつけられたのかを
レムは思い返す


そして夕べ
いつになく焦るように求めてきたマキナに
両手首を絡めとられた事を思い出すと

急に下半身が熱を帯びた

ピンで止められた蝶のように
ベッドに縫い付けられた時

レムが感じたのは
恐怖でも嫌悪でもなく、羞恥の入り交じった快感だった


マキナのものになれたらいいのに

自分の弱い部分だと知りつつも
全て投げ出して、マキナに曝け出して仕舞いたくなることと

女としての部分を全て占領されたいと思う本能のかけら
そのあと散々求められる事で得られる充足感

「ダメだな……わたし」


自分の病に冒された身体を気遣うマキナ
その事実をひた隠しにしてきた自分

これからもずっと、その事実に蓋をして生きていくと決めたのに

衝動的に、全てを曝け出して
もう彼の背中の後ろに隠れて仕舞いたくなる

それはマキナのレムを見つめる瞳が
一人前の男のものになってきたからだと思う

昔よりずっと背も高く、顔つきも端正になってきた彼が
心優しく、努力家で、いつの間にか頼りがいのある存在に
変わってきたからだろう

自分が持っている記憶には
自分より頭一つほど小さな少年でしかなかったのに

病に毒されたレムの身体の隅々まで
何も知らずに、けれど覆い尽くすほどに愛そうとするマキナ

レムは彼の思いに応えることが出来ないもどかしさと
女性として求められた喜びが
相混ざった感情に浸されているようだった


「大好き……」

こんな言葉で言い尽くせるのか
それもまだ夢を見ている彼に届いていないのに__と

彼が寝返りを打ち、無意識でベッドの上の彼女を探す腕を取って
レムは唇を軽く押し付けた

「マキナ……ここだよ」

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