13 手首(欲望) エイトとケイト


bruler

カチカチカチカチ……

時計の音が鳴り響く

あらかじめ持たされている時計は
今はケイトのポケットの中から
彼女の掌の中におさまっていた

「もうとっくに時間過ぎてるのに……なんの連絡も無いよね」

「あぁ」

コンテナの中に隠れること1時間以上
ミッション開始の合図はCOMMからやってこない

いつまでもそのまま待機していていいのか
それすらわからないが
外の様子が騒がしくなってきたため

いっそ飛び出して攻撃開始すべきか
連絡が来るのをひたすら待つかで

エイトとケイトの意見は割れていた

予定時刻を5分ほど過ぎてから
ケイトは苛立ち始めており

そのままどうしてもこのまま待っていられないという
ケイトをエイトは宥め続けていた

「でも、待つんでしょー? あんたは」
「あんたは……って、お前も待つんだよ、連帯責任だからな」
「何よそれ、つっまんない奴!?」

それ貸してくれ、と
時計に向けて手を伸ばしたエイトは

なぜか小さな傷がケイトの手首についているのを見つけた

「おい、それ……」
「んー?」

その小さな傷に向けて
軽く指をさしてきたエイトを
ケイトは面倒そうに眉だけ上げて返事をしてきた

エイトが見せてみろと手を出すと
思いのほかあっさりとケイトはその手をエイトに差出し
怪訝そうに彼のほうを見上げた

「……あ、さっき擦ったっけ?」
「じっとしてろ」

ケアルをかけようとするエイトに
ケイトはそれを制し、言った

「まだこれから何があるのか分かんないんだから
そこまでしなくて良いわよ、あんたそんなに魔力強く無いんだから」

「一言多いんだ、お前は」

そう言うと、エイトはそのままケイトの手首に顔を近づけ
ペロリと舌で血を舐めとった

「っ……!」
「……そんなに深く無かったな」

血が止まったその傷口は
5cmほどの擦り傷で、赤みが残っているだけだったが

ケイトはいくら幼少からの付き合いであっても
わざわざ男に傷口を舐められることに
少なからず気持ちがざわついた

エイトは素知らぬ顔で
ケイトの手から時計を取り
外の様子をうかがうようにして、秒針に視線を落とした

「なんで?」
「……ん?」
「そこまでする? ふつう……」
「さぁな」

そこから先のエイトはぶっきらぼうで
ケイトは一人、少し踊る気持ちを抑えるのに必死だった

COMMから指示が送られ
二人がコンテナの外に飛び出るのは、その1分後

そのころには二人はいつもの俊足で
戦場を駆け回ることになるのだが

エイトはそれからの数時間

ケイトの手首の感触を噛みしめていた

傷一つでも自分で癒さないと気が済まない自分が
その感触の全てを欲してやまないという現実を

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