※いつまでも一緒EDと、忘れられた肖像EDが混ざってます。 それと、ギャリーさんが画家。 ねぇ、なまえ。 なぁに?メアリー。 『外』ってどんなところなの? どうしたの、急に。 あのね…私も、外を見てみたいんだ。 そうなの…。…そうね、『外』はたくさん人がいて、ここにはないものがいっぱいあるわよ。 ここにはないものって、どんなもの? それは自分で見た方が分かりやすいわよ。 なまえも、ここに来る前はそれを見てきたの? そうよ。…大好きな人と一緒にね。 大好きな人? ええ……色々あって、今は一緒にいられないんだけどね。 ……寂しい? 寂しいわ。…とっても、ね。 でも、ここにはみんないるからなまえはひとりじゃないよ?みんな、なまえのこと好きだもん。 ありがとう。私だって皆のことは大好きよ。もちろん、メアリーのこともね。……でも、どうしても忘れられないの。 …『大好きな人』のこと? そう……離れてもう大分経つのに、駄目なの。会いたくて会いたくて、たまらないのよ。 本当にその人のことが好きなんだね…。 ずっと一緒にいたかった。…でも、出来なかった。仕方のないことって分かってるし、もう会えないって思ってた。………さっきまでは、ね。 …? ところで、メアリー。知ってる? ?なぁに? あなたさっき、『外』に出たいって言ってたわね。…方法、教えてあげようか? ほんと!?教えて! あのね、『外』へ出るには、外から来た人と入れ替わらなければならないのよ。 …入れ替わる? そうよ。 そうしたら、外に出られる? ええ。 ほんとう? ほんとうよ。『外』から来た私が言うんだから、信じてもいいんじゃないかしら。 それもそうだね。…そっかぁ、入れ替わればいいんだ…。 そういえばメアリー、ちょっと前にここに女の子と男の人が入って来たのよ。『お客さん』なんて珍しいから、皆喜んでたわ。 女の子と男の人…? そうね…今さっき『無個性』が、『決別』の部屋の近くで人を見かけたって言ってたから、もしかしたらその人たちかもしれないわね。 『決別』の? お客さんは2人みたいだから、どちらかと入れ替わればここから出られるわね。 うん!私、行ってみるね!ありがとう、なまえ! どういたしまして。……外に出られるといいわね、メアリー。 「………」 赤い薔薇を持った少女が階段を上がっていったのを見計らって、そっと近付いた。 床の上には青い花びらが散らばっていて、上の階からメアリーの声が聞こえる。 「すき……きらい……」 花占いをしているようだ。 ここにいる女たちは皆、花占いが好きだけれど、私はどちらかというとタロット占いの方が好きだ。 何しろ、絵柄がとても綺麗だから。 特に『吊るされた男』のカードが大好きだ。 『彼』も、あのカードの男のように吊るされたら、さぞや綺麗なのだろう。 彼が描く絵は、どれも美しい。 『私』のことも、彼はとても美しく描いてくれた。 それでもある日、彼が私を画商に預けた時、目の前が真っ暗になった気がした。 彼が私を手放したことについてもそうだけれど、もう彼に会えないということの方が私を絶望させた。 狭いキッチンでコーヒーを淹れる背中。 難しい表情でキャンバスに向かう横顔。 私以外の絵に注意を向けているのは嫌だった。 でも、私は彼と一緒にいられればそれで良かった。 なのに、なのに、ある日突然、私は彼のもとを離れねばならなくなった。 寂しくて悲しくて、気が狂いそうになった。 けれど、それももう、終わり。 「やっと会えたわね、ギャリー」 声をかけると、彼がはっとしてこちらを向いた。 荒い呼吸の下、彼の目が大きく見開かれた。 「あ……あんた……」 ずっと前から来ているボロボロのコートも、珍しい色の髪も、綺麗な顔も。 最後に見た時と、何も変わっていない。 「……なまえ…?」 「覚えていてくれたのね?嬉しい…!」 嬉しくて嬉しくて、思わず駆け寄り、壁にもたれた彼の隣に膝をついて抱きついた。 彼は一瞬身を固くしたけれど、抵抗はしなかった。 「…まさか…なん、で…」 「あなたが私を売ってから、私、寂しくて寂しくて、仕方なかったのよ」 「……そんな…はず…」 「あぁでも、私を手放したことを怒っているんじゃないのよ?怒ってはいないけど、あなたと離れるのは辛かったわ。…おかしくなりそうだった」 絵の中から見つめるだけだった頃には、触れることすらできなかった。 それがどうだろう、今はこうして腕に抱くことができる。 彼の肌は、想像していた通りに冷たかった。 私にも体温はないから、お揃いね。 「ねぇギャリー。私、あなたに伝えたかったことがあるの」 遠くで、メアリーの花占いは続いている。 「私ね……ふふ、改めて言うとなると恥ずかしいわね」 すき、きらい、すき、 「私……あなたのこと、」 きらい、 「大好き…!」 ふと、腕の中の彼が重たくなった気がした。 さっきまで私の首元を掠めていた呼吸も静かになっている。 静寂は好きだ。 ここで静かに、永遠に―――あなたとともに。 「これでもう、離れずに済むわ」 細身の体をいっそう引き寄せて、柔らかい髪に顔を埋める。 ふんわりと、お菓子のような甘い香りがした。 「ずっと一緒よ。いつまでも……」 上の階からは、もう何も聞こえなかった。 私たちの傍で青い花びらがひらりと舞い、彼の上に落ちてきた。 彼には青がよく似合う。 「愛してるわ、ギャリー」 * * * * * 「―――イヴ!」 呼びかけられて、イヴは振り返った。 階段のところから、金髪碧眼の少女が駆けてくる。 「…メアリー」 「もう、どこ行ってたの?お母さんが探してたわよ」 「ごめん…」 答えつつ、イヴは記憶を辿った。 しかし、両親とともに美術館に来た辺りから記憶が曖昧で、はっきりしない。 気付いたらあの大きな絵の前に立っていて、何となく館内を歩き―――この絵の前に来た。 「何見てたの?」 メアリーがイヴの視線を辿り、その絵を見た。 青い瞳が少し見開かれる。 それから、ふと微笑んだ。 「そっか…よかったね」 「……?」 首を傾げるイヴになんでもない、と答えた時、階段のところに母親が現れた。 「はぁい、今行くー!」 メアリーは返事をし、イヴの後ろに回った。 「ほら、行こ?」 「あ、メアリー…」 「今日の晩御飯、なんだろうね?私、お腹すいちゃった!」 戸惑ったような声を上げるイヴは後目に、メアリーはその背を階段の方に押した。 と、階段に辿りついた時、少女は不意に振り返った。 青い目が柔らかに細くなる。 「あなたたちもずっと一緒ね、なまえ」 2人の少女がいなくなった後には、一組の男女が描かれた絵が残された。 眠る男性と、彼を愛おしげに抱きしめた女性。 タイトルは、『忘れられた肖像』。 小さな美術館で開かれたワイズ・ゲルテナ展は、なかなか賑わって終了した。 しかし、そこでひとつだけ、不思議な話が残った。 ゲルテナの作品の中で、いつの時期に制作されたか分からないものは多々ある。 しかし、中でも『忘れられた肖像』というタイトルの絵は、熱狂的なゲルテナファンでも存在自体を知らなかった作品だった。 更に、客のひとりの画商によると、そこに描かれた男女の女性の方が、自分がかつて扱った絵の女性にそっくりだというのだ。 才能はあるが無名の青年画家から預かり、買い手を見つけたというその絵の名は。 『なまえ』 初Ib、初ギャリーさんでした。 初めてプレイしたフリーゲームでしたが、クオリティの高さに鳥肌が立ちました。 もちろん怖さでもしっかりチキン肌でしたよ…! 桜雲はビビりなので、液晶の前で奇声あげながらプレイしてました。 雰囲気も独特で綺麗ですし、何より登場人物が皆さん魅力的です。 主人公のイヴちゃんはかわいいし意外と男前、メアリーは切なかわいくて、そしてギャリーさんはとにかくイケメンでした。 どこぞの帽子屋さんと勘違いしてごめんね! でも、ギャリーさんの声はずっと某石田彰さんで脳内再生されてました(← あの美声でオネェ喋りって、完全に私得とか勝手に思ってます。 アニメ化されないかなぁ…(ぼそっ 小説について喋りますと、夢主はギャリーさんが描いた絵です。 ギャリーさん大好きなヤンデレ?です。 メアリー焚きつけてギャリーさんと入れ替わるように仕向けたりとか、けっこう腹黒ですが、愛ゆえにです。 ちなみに、夢主の名前は『アリス』です。 由来とかはありませんが、タイトルが『Alice』なのはその所為です。 それにしてもヤンデレは書くのが楽しいですね〜 と、いうことで読んで下さった方、ありがとうございました! |