Log1 | ナノ


※いつまでも一緒EDと、忘れられた肖像EDが混ざってます。

それと、ギャリーさんが画家。








ねぇ、なまえ。

なぁに?メアリー。

『外』ってどんなところなの?

どうしたの、急に。

あのね…私も、外を見てみたいんだ。

そうなの…。…そうね、『外』はたくさん人がいて、ここにはないものがいっぱいあるわよ。

ここにはないものって、どんなもの?

それは自分で見た方が分かりやすいわよ。

なまえも、ここに来る前はそれを見てきたの?

そうよ。…大好きな人と一緒にね。

大好きな人?

ええ……色々あって、今は一緒にいられないんだけどね。

……寂しい?

寂しいわ。…とっても、ね。

でも、ここにはみんないるからなまえはひとりじゃないよ?みんな、なまえのこと好きだもん。

ありがとう。私だって皆のことは大好きよ。もちろん、メアリーのこともね。……でも、どうしても忘れられないの。

…『大好きな人』のこと?

そう……離れてもう大分経つのに、駄目なの。会いたくて会いたくて、たまらないのよ。

本当にその人のことが好きなんだね…。

ずっと一緒にいたかった。…でも、出来なかった。仕方のないことって分かってるし、もう会えないって思ってた。………さっきまでは、ね。

…?

ところで、メアリー。知ってる?

?なぁに?

あなたさっき、『外』に出たいって言ってたわね。…方法、教えてあげようか?

ほんと!?教えて!

あのね、『外』へ出るには、外から来た人と入れ替わらなければならないのよ。

…入れ替わる?

そうよ。


 

そうしたら、外に出られる?

ええ。

ほんとう?

ほんとうよ。『外』から来た私が言うんだから、信じてもいいんじゃないかしら。

それもそうだね。…そっかぁ、入れ替わればいいんだ…。

そういえばメアリー、ちょっと前にここに女の子と男の人が入って来たのよ。『お客さん』なんて珍しいから、皆喜んでたわ。

女の子と男の人…?

そうね…今さっき『無個性』が、『決別』の部屋の近くで人を見かけたって言ってたから、もしかしたらその人たちかもしれないわね。

『決別』の?

お客さんは2人みたいだから、どちらかと入れ替わればここから出られるわね。

うん!私、行ってみるね!ありがとう、なまえ!

どういたしまして。……外に出られるといいわね、メアリー。







「………」


赤い薔薇を持った少女が階段を上がっていったのを見計らって、そっと近付いた。

床の上には青い花びらが散らばっていて、上の階からメアリーの声が聞こえる。


「すき……きらい……」


花占いをしているようだ。

ここにいる女たちは皆、花占いが好きだけれど、私はどちらかというとタロット占いの方が好きだ。

何しろ、絵柄がとても綺麗だから。

特に『吊るされた男』のカードが大好きだ。

『彼』も、あのカードの男のように吊るされたら、さぞや綺麗なのだろう。

彼が描く絵は、どれも美しい。




『私』のことも、彼はとても美しく描いてくれた。




それでもある日、彼が私を画商に預けた時、目の前が真っ暗になった気がした。


彼が私を手放したことについてもそうだけれど、もう彼に会えないということの方が私を絶望させた。




狭いキッチンでコーヒーを淹れる背中。


難しい表情でキャンバスに向かう横顔。


私以外の絵に注意を向けているのは嫌だった。


でも、私は彼と一緒にいられればそれで良かった。


なのに、なのに、ある日突然、私は彼のもとを離れねばならなくなった。


寂しくて悲しくて、気が狂いそうになった。




けれど、それももう、終わり。




「やっと会えたわね、ギャリー」




声をかけると、彼がはっとしてこちらを向いた。


荒い呼吸の下、彼の目が大きく見開かれた。




「あ……あんた……」




ずっと前から来ているボロボロのコートも、珍しい色の髪も、綺麗な顔も。


最後に見た時と、何も変わっていない。




「……なまえ…?」


「覚えていてくれたのね?嬉しい…!」




嬉しくて嬉しくて、思わず駆け寄り、壁にもたれた彼の隣に膝をついて抱きついた。


彼は一瞬身を固くしたけれど、抵抗はしなかった。




「…まさか…なん、で…」


「あなたが私を売ってから、私、寂しくて寂しくて、仕方なかったのよ」


「……そんな…はず…」


「あぁでも、私を手放したことを怒っているんじゃないのよ?怒ってはいないけど、あなたと離れるのは辛かったわ。…おかしくなりそうだった」




絵の中から見つめるだけだった頃には、触れることすらできなかった。


それがどうだろう、今はこうして腕に抱くことができる。


彼の肌は、想像していた通りに冷たかった。


私にも体温はないから、お揃いね。




「ねぇギャリー。私、あなたに伝えたかったことがあるの」




遠くで、メアリーの花占いは続いている。




「私ね……ふふ、改めて言うとなると恥ずかしいわね」




すき、きらい、すき、




「私……あなたのこと、」




きらい、




「大好き…!」




ふと、腕の中の彼が重たくなった気がした。


さっきまで私の首元を掠めていた呼吸も静かになっている。


静寂は好きだ。


ここで静かに、永遠に―――あなたとともに。




「これでもう、離れずに済むわ」




細身の体をいっそう引き寄せて、柔らかい髪に顔を埋める。


ふんわりと、お菓子のような甘い香りがした。




「ずっと一緒よ。いつまでも……」




上の階からは、もう何も聞こえなかった。


私たちの傍で青い花びらがひらりと舞い、彼の上に落ちてきた。


彼には青がよく似合う。




「愛してるわ、ギャリー」













* * * * *













「―――イヴ!」




呼びかけられて、イヴは振り返った。


階段のところから、金髪碧眼の少女が駆けてくる。




「…メアリー」


「もう、どこ行ってたの?お母さんが探してたわよ」


「ごめん…」




答えつつ、イヴは記憶を辿った。


しかし、両親とともに美術館に来た辺りから記憶が曖昧で、はっきりしない。


気付いたらあの大きな絵の前に立っていて、何となく館内を歩き―――この絵の前に来た。




「何見てたの?」




メアリーがイヴの視線を辿り、その絵を見た。


青い瞳が少し見開かれる。


それから、ふと微笑んだ。




「そっか…よかったね」


「……?」




首を傾げるイヴになんでもない、と答えた時、階段のところに母親が現れた。




「はぁい、今行くー!」




メアリーは返事をし、イヴの後ろに回った。




「ほら、行こ?」


「あ、メアリー…」


「今日の晩御飯、なんだろうね?私、お腹すいちゃった!」




戸惑ったような声を上げるイヴは後目に、メアリーはその背を階段の方に押した。


と、階段に辿りついた時、少女は不意に振り返った。


青い目が柔らかに細くなる。




「あなたたちもずっと一緒ね、なまえ」




2人の少女がいなくなった後には、一組の男女が描かれた絵が残された。


眠る男性と、彼を愛おしげに抱きしめた女性。


タイトルは、『忘れられた肖像』。






小さな美術館で開かれたワイズ・ゲルテナ展は、なかなか賑わって終了した。


しかし、そこでひとつだけ、不思議な話が残った。


ゲルテナの作品の中で、いつの時期に制作されたか分からないものは多々ある。


しかし、中でも『忘れられた肖像』というタイトルの絵は、熱狂的なゲルテナファンでも存在自体を知らなかった作品だった。


更に、客のひとりの画商によると、そこに描かれた男女の女性の方が、自分がかつて扱った絵の女性にそっくりだというのだ。


才能はあるが無名の青年画家から預かり、買い手を見つけたというその絵の名は。




『なまえ』













初Ib、初ギャリーさんでした。


初めてプレイしたフリーゲームでしたが、クオリティの高さに鳥肌が立ちました。


もちろん怖さでもしっかりチキン肌でしたよ…!


桜雲はビビりなので、液晶の前で奇声あげながらプレイしてました。


雰囲気も独特で綺麗ですし、何より登場人物が皆さん魅力的です。


主人公のイヴちゃんはかわいいし意外と男前、メアリーは切なかわいくて、そしてギャリーさんはとにかくイケメンでした。


どこぞの帽子屋さんと勘違いしてごめんね!


でも、ギャリーさんの声はずっと某石田彰さんで脳内再生されてました(←


あの美声でオネェ喋りって、完全に私得とか勝手に思ってます。


アニメ化されないかなぁ…(ぼそっ




小説について喋りますと、夢主はギャリーさんが描いた絵です。


ギャリーさん大好きなヤンデレ?です。


メアリー焚きつけてギャリーさんと入れ替わるように仕向けたりとか、けっこう腹黒ですが、愛ゆえにです。




ちなみに、夢主の名前は『アリス』です。


由来とかはありませんが、タイトルが『Alice』なのはその所為です。


それにしてもヤンデレは書くのが楽しいですね〜


と、いうことで読んで下さった方、ありがとうございました!





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -