※『宴もたけなわ』の大学教授と娘が出てきます。 ※ロリコンジャナイヨ。 「にいちゃん!」 子供の声に振り返ると、鳩尾辺りに何かが突撃してきた。 あまりに勢いが良かったので、一瞬息が詰まる。 襲撃してきた何かは腰に腕を回して、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。 見下ろすと黒い頭が見えた。 「…お嬢」 すると、黒い頭が顔を上げる。 とても可愛らしい顔をした幼女だった。 幼女は彼を見上げて嬉しそうに笑う。 「ジンにいちゃん、かくほ!」 「つかまっちまったなァ。お嬢は良い刑事になれそうだ」 「ほんと?わたし、けいじさんなれる?」 はしゃぐ幼女と、彼女の頭を撫でるのは泣く子も黙る夕神迅検事。 その組み合わせがあまりにミスマッチ過ぎて、周囲の人々はその様子を固唾をのんで見守っていた。 「まさか夕神検事の娘さん…!?」などとひそひそ話している者もいる。 そんな中、幼女と検事の周りだけがほのぼのとしている。 そこへ、高い靴音を鳴らして近づく女性がひとり。 周囲の何人かが視線をさらわれるほどの美人だったが、まとった白衣には皺が寄っている。 女性は気怠げに歩み寄りながら、髪をかきあげた。 そうして立ち止まると、幼女に向かって声をかける。 「足、速くないですか」 「おかあさんが遅いんだよ」 幼女が発した『おかあさん』という単語に、周囲の人々がまた困惑する。 「まさか、夕神検事の奥さん…!?」などとおののいている人もいる。 「生憎ですが、違います」 「?おかあさん?」 「何でもないです。それより、あまり迅の手を煩わせてはいけませんよ。そろそろ開廷時刻です」 子供と話すにしては難しい言葉回しで、女性は言った。 それに対し、夕神が口を開いた。 「構やしねェよ。ちっと遅れたくれェで文句言うような奴ァ、いねェしな」 なぁ、泥の字? そんな意味を込めた目で、夕神が後方に立っていた王泥喜を見やった。 彼はこの事件の担当弁護士だ。 幼女に向けられていたものとは一転して鋭い視線を向けられ、王泥木は思わず姿勢を正す。 理不尽だ、と思いつつも。 「…さすがに私でも職務怠慢はしませんよ。やはりロリコンさん、というやつですか」 女性は呆れたように言って、娘の名前を呼んだ。 「傍聴席に行きましょう」 「えー」 「…なまえ」 「何ゆえ君まで文句ありげな顔するんですか」 ボケとツッコミの立場逆転してるじゃないですか、変なこと言うのは私の役目でしょうが。 そんなことを呟きながら、女性は娘の手を引いた。 娘は不安げに母親を見上げる。 「おかあさん、」 「…分かってます。裁判が終わったら、遊んでもらいましょうね」 そう言われ、娘は顔をほころばせた。 「うん!ジンにいちゃん、あとでね!」 「おう。いい子にしてるんだぞ、お嬢」 幼女は笑顔で頷き、母親に手を引かれて去っていった。 「………」 「…何だよ」 「い、いえ…」 残された夕神を何とも言えない目で見ていた王泥喜は、本人に低い声を向けられて肩を跳ねさせた。 それ以上は問おうとせず、夕神は怪訝そうな顔で法廷へと向かった。 彼は歩幅が広くて歩くのが速いが、今日は一段と速いような気がする。 気のせいだろうか。 「ジン…にいちゃん…」 「ユガミ検事って、意外と子供好きなのかな…」 後に残った弁護士たちは、微笑ましいような信じられないような、不思議な気分で長身の背中を見送った。 リトルハニー ――――――――― 11歳の心音ちゃんにも懐かれてたそうなので、子供好きなのかなーと思って。 決してロリにしたつもりはないです(^q^) あと、教授が割とまとも。 20131001 |