※モブとの性描写注意です。

























ぐちゅぐちゅ、と音が耳にへばりついてくる。少女はそれが何か知っていたが、もう分かりたくもなかった。

少女の上で、そのイキモノは呼吸を荒くしている。細い腰をがっしり掴んで引き寄せ、同時に己の腰を無我夢中で前後に振った。衝撃で少女の奥歯が、がきりと鳴る。しかしそんなものは最早聞こえていないのだろう、イキモノは少女の膝に両手をかけ、更に大きく開かせた。普段の生活ではあり得ない角度と脳天まで突き抜けるような痛みに少女が口の中だけで小さく悲鳴をあげた。―――いつまで経っても、この痛みは消えない。

 
「は……はぁっ、あっ…う、ぐ…」


イキモノの息に切羽詰まったものが混じり、腰の動きも速さを増した。イキモノのそれが少女の中を強引に行ったり来たりする度、ぐじゅぐじゅと不快な音が立つ。ひどい圧迫感に抗おうとする気力はとうに少女には残っていなかった。揺れる膝を抑えた、無骨な手指の力が、ぐっと強くなった。――そして、不意にイキモノが尖ったうめき声を上げ、腰を一瞬止めた。しかし、動きはすぐにゆるゆると再開する。

同時に、何度目かもう数えてもいないけれど、少女は腹の奥の方で何かどろりとした感触を覚えた。――きもちわるい。不快感で渇いた視界を上向けるが、何を勘違いしたかイキモノは情欲を煽られたようだった。少女の腰の下に腕を入れて体を持ち上げ、更に深く穿った状態で、イキモノは再び腰の動きを速めた。がくんがくんと体が揺さぶられて、喉が詰まる。それでも、声だけは出さない。何の意味もないように思えるが、それが少女の最後の防壁だった。くちびるが切れて血が滲んでも構わない。


その後何度も何度も何度も、イキモノは少女に己を打ち付け、何かどろりとしたものを放ち、また腰を振った。その行為は空が白むまで終わることはなかった。








身なりを整え、薄もやの中を急いだ。着物の胸元には男から支払われた金が入っていた。これでまた、本を一冊買うことができる。その分勉強することができる。うれしい。手段はどうであれ、そう思わなくては。身寄りもない、幼い少女がたったひとりで生活する方法は限られているのだ。

見えてきた教え処では、すでに授業が始まっていた。そっと中に滑り込み、端に座って袂を探るが、教科書を持ってきていなかったことに気付いた。客の部屋に忘れてきてしまったようだ。きっと今頃、花売りの小娘が本なんか、と笑われ捨てられていることだろう。思わず舌を打ちそうになった。

……と、不意に本が横に滑ってきた。顔を上げれば大きな釣り目と一瞬かち合ったが、すぐにそらされる。


「……教科書、忘れたんでしょう」


ひそめた声に返事を忘れる。この教え処で少女が話しかけられたり、ましてや親切にされるなんて非常に珍しいことだったからだ。少女は生徒たちの中でいちばん年上で、そして誰より異質だった。年のせいでも身寄りがないせいでもない。日々ともに学ぶ子供たちは、少女の纏う少女”らしからぬ空気を何となく察しているのだ。

しかしその生徒は、あっさりと教科書を見せてくれた。鬼には珍しい直毛に一本角。…ほおずき、くん。少女と同じく孤児だが、いろいろと違った意味で異質な存在だが、友達もいる。彼女とは違う。


「…ありがとう」
「いえ」


それだけの、会話とも呼べないくらいの短い関わり。けれど、なぜか、ゆびさきがくすぐったいような、妙な心持ちがした。

その日から始まった異質なふたりの小さな交流が、以降数千年に渡って続く縁になるなんてその時彼らはまるで知らなかった。






*****







「―――なまえさん」


耳元で不意に、囁くように呼ばれた。――寝てると思ってたけど。ん、と返事をすれば背中から腕が回る。首筋にすりすりと頬を寄せられ、くすぐったい。仕返しに髪を梳いて軽く引っ張ってやった。そこで、はっとする。……昔、子供の頃に、花を売っていた客で覚えた仕草だから。

しかし彼は気にする風もなく、なまえの手を絡めとった。…変わらない。初めて言葉を交わしたあの時から。教科書を貸してもらってから少しずつ交流を持ち、そのうち何の因果か異質な者同士で惹かれ合い、なまえが生きることと勉学のためとはいえ男に体を売っていたことを知っても彼は何ら態度を変えることはなかった。


「…なに笑ってんです?」
「気のせいでしょう」
「そうですか。じゃあ、もう一回します?」
「ばか」


太腿を撫でる指を遠慮なくつねると、さすがに痛かったのか手が引いた。彼はそれでやめてくれる。あの、客たちとは違う。

そんなこんなで数千年、百年に一度くらい大喧嘩しつつも仲睦まじく過ごしてきた。すべてはあの時教科書を忘れたおかげ……なんて少女漫画のようなことは決して言わない。心の中では、もしかしたらぽろっとこぼしているかもしれないけど。







なんだかうまくまとめられませんでした…すみません(;´Д`)
では、読んで下さってありがとうございました。

20150503




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