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※SIREN2パロ。『鳩』の夢主と弟三成



人魚姫。世界中で愛されている、人魚姫と人間の悲恋を描いた童話だ。王子に会うため、人魚は魔女に声と引き換えに足をもらい、陸に上がって王子と恋に落ちた。しかし様々なすれ違いから、王子は全く別の娘と結婚することになってしまう。己ではない娘と王子が結ばれれば、己は泡になって消える。そう、魔女から聞かされていた。そこへ現れた姉たちは、「王子を殺せば人魚に戻れる」と彼女に告げ、短剣を差し出す。しかし彼女には、愛する王子の命を奪うことなどできなかった。結局、人魚姫は自ら海に身を投げ、泡となって消えていった。……そんな、お話。


「あねうえ!」


元気のいい声に顔を上げると、弟が絵本を抱えてこちらに寄ってきた。


「どしたの、三成」


弟の頭を撫でながら問うと、彼は手に持った絵本を差し出してきた。タイトルは、『人魚姫』。ずいぶん可愛らしいものを読んでいるなぁと微笑ましくなる。よくよく見ると、人魚姫の絵の横に、「あねうえ」と書かれていた。


「三成、これ…」
「あねうえは、海からきたのでしょう?これといっしょです」


弟は無邪気に絵本を示した。確かに彼と初めて会った時、彼女は海岸に倒れていた。そこを彼が見つけてくれたのだ。幼い彼が、彼女を「人魚」と重ねるのは無理もない。―――何故彼女が海岸に倒れていたのか、知らないから。


「そうかなぁ。お姉ちゃん、この人魚さんみたいにキレイじゃないよ」
「そんなことはありません!あねうえは、だれよりもうつくしいです」


まだ幼いのに語彙力が達者なのは、保護者の教育の賜物だろう。素性も分からない彼女を受け入れてくれた、優しい人たち。…本当のことを言ったら、彼らも島のみんなのように『化物』だと言うのだろうか。暗い考えを振り払うように、彼女は弟の頭を殊更優しく撫でた。すると、弟は絵本に目を落とす。それから、真っ直ぐに彼女の目を見つめて、こんなことを言った。


「あねうえ。わたしは、ぜったいに王子のようには、なりません」
「…どういうこと?」
「王子は、じぶんをたすけてくれた人魚を裏切って、ほかのおんなとけっこんしました」


人魚姫は喋ることが出来なかったから、王子が命の恩人だと気付けなかったのも仕様のないことだ。しかし、幼い彼には王子の行為が人魚への裏切りに思えたのだろう。


「わたしは、ぜったいにあねうえを裏切ったりしません。あわになど、させません。わたしがずっと、あねうえを守ります」


強い言葉で、彼は言い切った。――ほんとうに、この子は。ちょっと気難しいけど優しくて、頑張り屋さん。何より、こんな私を姉として慕ってくれている。……三成。彼女が呼ぶと、彼は律儀に返事をした。


「…ありがとう。すごく嬉しい」
「…あ、あねうえ?どうして泣いて……ど、どこか痛いのですか?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。目にゴミが入っただけだから」


先ほどまでの毅然とした態度はどこへやら、おろおろしだした彼を、彼女は思い切り抱きしめた。


「あねうえ…?」
「大好きよ、三成」


あなたは、あなただけは。絶対に私が守る。『ママ』は怒るだろうけれど、構うものか。私は『ママ』の娘である前に、この子のお姉ちゃんなんだ。巣に戻らない鳩だって、中にはいる。

わたしもです、と背中に回された腕は、とても暖かかった。




――――――――――
最近パロが多いですが、今度はSIREN2です。鳩の皆さんはみんな『おかあさん』て呼んでたので、ひとりくらい『ママ』呼びしてもいいかなぁと思って。夢主と三成が三上んと加奈江おねえちゃんみたいな関係になりました。タイトルも三上んのベストセラーからですし。ちなみに、ゲーム自体は怖くてできてません。動画で見ました← やみんちゅ化したともえちゃん怖すぎだろ…。では、読んで下さってありがとうございました。

20140323




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