Log2 | ナノ

※ギンと妹分な蛇(←夢主です)



ある寒い日。散歩に出て主の元へと帰る途中、花壇のところに何か細いものを見つけた。


「…?」


よく見ると、それは道端には似つかわしくなさすぎる生き物だった。


「…蛇、か?」


真っ白な体の、蛇だ。ここは町のど真ん中なので、どう考えても野生ではない。どうしてこんなところにいるのだろう。さっきからぴくりともしない蛇の傍らに降り立ち、しばし観察した。とぐろを巻いて小さくなくなっているその蛇は、小刻みに震えていた。


「…おい、お前」
「……!!」


ギンが声をかけると、蛇はがばりと顔を上げた。つぶらな黒い目が、恐怖に揺れる。


「た、鷹…!?」
「どこの誰に飼われているのか知らないが、こんなところで何してる?」
「い、いや!近づかないで!」


蛇はびっくりするような素早さで街路樹の影に隠れた。頭だけをちょっぴり覗かせて様子を伺ってくる。


「わ、わたしのこと、食べようっていうんでしょ!そ、そ、そうはいきませんよ!」


頭の先だけ出して威勢のいいことを言っているが、全く迫力がない。


「蛇を食べる趣味はない」
「ほ、ほんと?ほんとに、食べないですか?」
「食べ物ならネズミが好きだ」
「あ、そうそう、ネズミさんて美味しいですよね!…っじゃなくて!」


思わず話に乗りそうになって、蛇は慌てて街路樹に隠れ直した。


「そもそも、あなたこそ。鷹がなんでこんなところでフラフラしてるんですか!」
「散歩の帰りだ」
「え、こんな寒い日に散歩?恒温動物は羨ましいなぁ……は、は、はーっくしょい!!」


思い切りくしゃみをしている蛇に、そういえば彼女の仲間は自分で体温調節ができないことを思い出した。


「お前…寒くないのか?今日は太陽も出ていないが…」
「寒いですよ!めっちゃ寒いです!気を抜いたら冬眠しちゃいそ……」


言っている途中で、頭の軸がぐらぐらしてきた。


「…あう、だ、だめ…寝ちゃ…おだぶつ…」


しばしの間、くわんくわんと前後左右に揺れてから、蛇はその場に倒れふした。


「…おい?」
「……すぴー…」


冬眠したようだ。


「忙しい奴だな…」
 


仕方ないので、蛇の胴体を足で掴んで舞い上がる。このまま放っておいたら、体温が下がり続けて死んでしまうかもしれない。蛇を掴んで飛んでいく鷹の図は、どう見てもエサを運んでいるようにしか見えなかったが、それは第三者視点の話だ。



* * * * *



「あ!ギンさん!」


主の執務室に戻ると、いつものように明るい声が聞こえた。止まり木に舞い降りるとすぐさま体に何かが巻きついてくる。


「おかえりなさい!」
「…ああ」


真っ白な体の蛇が、ギンの胴体に巻きついていた。彼女は、少し前にギンが散歩帰りに見つけた蛇で、話している最中に冬眠しかけてしまったところを彼に助けてもらったという経緯があった。以来、ギンと一緒に主の元で暮らしている。最初はギンを怖がって、主の腕やら首やらにしがみついて震えていた彼女ではあるが(ギンの主は苦笑いしていた)、もうすっかり慣れてしまったようだ。それどころか、ずいぶんと懐かれてしまった様子である。


「ギンさんギンさん、遊んで下さい!」
「…何をするんだ?」
「そうですねぇ…あ、ぷろれす!ぷろれすしましょうよ!」


目をキラキラさせて言ってくるので、どうにも断れない。


「…わかった。だが、少しだけだぞ?そろそろ主が戻ってくるだろうからな」
「はーい!」


元気に返事をした彼女と、プロレスごっこに興じる。彼女は最近、テレビでたまたま見た「プロレス」なる格闘技に興味津々なのだ。適度に力加減をしつつ相手をしていると、部屋の扉が開いて主が顔をのぞかせた。


「!迅さま!」


主の姿を認めた彼女が駆け寄ろうとするが、何故か動けない。それもそのはず、遊んでいる間に体が絡まってしまっていたのだった。


「あれ?わああ、ギンさーん!迅さまー!たーすけてー!」


机の上でごろごろ転がりながら焦る様子に、主は小さく笑いながら絡んだ結び目を外した。


「絡まってんぞ、お嬢ちゃん」
「あうう…ちょっとはしゃぎすぎました」


やっと自由になった彼女は、そのままくるくると主の腕に巻き付いた。


「おかえりなさい、迅さま!」


すりすりと頭を寄せてくる彼女の頭を、主が指で撫でてやっていた。その様子を、ギンが暖かく見守っている。人間に鷹に蛇、とかなり奇妙な取り合わせだが何だか馴染みつつある、執務室の風景だった。




―――――――――――
最近、ペットを飼いたいんだがどう思いますか?とグー〇ル先生にお伺いを立てております。色々探していたら、蛇さんの画像にいきつきました。目がつぶらでとっても可愛かったのですが、そんな感想抱くお嬢さんは少ないと思ったので、なるたけ可愛い振る舞いになるよう気をつけて書きました。蛇苦手な方は申し訳ありませんでした。タイトルは某サーキュレーションから。では、読んで下さってありがとうございました。

20140314



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