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※『こぎつねこんこん』続き
※成長した妖狐三成と生まれ変わった巫女さん



「みーつけた!」


そんな声に、思わず立ち止まる。すると、尻尾に何かがしがみついてきた。


「…!」
「やっとつかまえたぞ、九尾!」


肩越しに振り返ると、尻尾の1本に小さな女の子が抱きついていた。会うのは初めてだが、とても懐かしい匂いのする幼女だった。


「…なんだ、貴様」
「おお、想像以上のモフモフだな!」
「話を聞け」


こちらの質問には答えず、幼女はひたすらに彼の尻尾に頬ずりしている。本来、彼の尻尾は無闇矢鱈にモフるためのものではないので、幼女を引き離すため、別の尻尾を彼女の胴体に巻きつけた。しかし、引けども引けども彼女は彼の尻尾を離そうとしない。最終的に9本全て総動員して引き剥がしにかかったが、


「おおぉ!名状しがたきモフモフの嵐!」


と、幼女が意味のわからないことを言って喜んだだけだった。相変わらずこの娘は、遠慮というものを知らない。諦めてされるがままになることにした。


「はぁ…このふわふわしっぽ!初めて見たときから、ずっとモフりたいと思っていたんだ」
「…前に散々モフっていただろうが」
「うん?なにかいったか?」
「何でもない」


彼はつい、とそっぽを向いた。彼が大人しいのをいいことに、幼女は遠慮なく白い尾を触り始めた。撫でたり、握ったり、毛を逆立ててみたり、抱きついたり。好き勝手やっているが、彼は怒ることもなかった。この娘の勝手にはもう慣れている。


「…しかし、九尾。おまえ、ずいぶんと気がきよいな。妖狐のくせに、めずらしい」


このしっぽのように白いぞ!今度はぺしぺしと尾を叩きながら、幼女は言った。


「…貴様がそう在れと言ったのだろう」


ぼそりと何か呟いたが、彼女には聞こえなかったらしい。それからしばらく彼の尾を愛でてから、ふと空を見上げた。


「む。もうこんな時間か。そろそろかえらねば、巫長さまがしんぱいしてしまうな」


巫長。幼女が発した単語に、一瞬彼の耳が動いた。彼は、現在の巫長とは顔見知りだった。気は弱いが心優しい、今で言ういじられキャラな娘である。稲荷神に仕える狐たちの中でも高位に位置する彼にはちゃんと丁寧に接してくるし、何十代か前の巫長とは大違いだった。最後に尾の毛並みを整えて、幼女は彼の正面に回ってきた。


「なぁ、九尾。また会いにきていいか?」
「…好きにしろ」


すると、幼女は嬉しげに笑った。


「おまえ、いいやつだな!なまえは何というんだ?」
「…佐吉だ」
「うん?それ…真名じゃないのか?おしえていいのか」
「今更だな」
「?変わったやつだな…まぁいいか。ではまたな、佐吉!」


小さな手を振り、幼女は社の階段を下りていった。その背を見送る彼の耳に、ふと声が聞こえた。


「だから言ったろう?おまえは約束を守る子だと」


ざぁっと風が吹いた。確かに聞こえたはずの声は、もうしない。…気のせいだったのだろうか。


「……」


あれは結局、巫女の運命から逃れられないらしい。まだ尾が1本だった頃を思い出した。千年以上も前の話だが、昨日のことのように脳裏に浮かぶ。


もうすぐ、紅葉の季節だ。あれの髪には紅い楓の葉が似合うだろう。




―――――――――
妖狐三成の続きです。生まれ変わって幼女になった巫長さまと、九尾になった三成のお話がみたいと言って下さる方がいらっしゃったので、今回も勢いでガリガリ。ちびっこ妖狐と巫長さまは、別れ方が悲しかったりすると個人的に美味しいです← 巫長さまが神様の花嫁になるという体で生贄にとか…。それでは、読んでくださってありがとうございました。

20140304




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