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※ちびっこ妖狐な三成(というか佐吉)と巫女さん



「みーつけた!」


そんな声とともに、後ろから抱き上げられる。


「…!は、はなせ!」
「やなこった!やっと捕まえたぞ、子狐!」


彼を力いっぱい抱きしめて、その娘はすりすりと頬ずりをした。ふわふわの尻尾がたまらない。が、動きを封じられている彼の方もたまらない。本来、無闇にモフるためのものではないのだ。


「はなせっ!巫め、はなせといっている!」
「嫌に決まってるだろ?ようやっと捕まえたんだ、今日こそは飽きるまでモフらせてもらうよ」


娘は彼をがっちり抱き直した。こんな非常識な娘が、神聖なる稲荷神社の巫女とは思いたくない。ばたばたと暴れてもびくともせず、いい加減彼の短い堪忍袋の緒が切れそうだった。


「いい加減にしろ!さもなくば…!」


彼が手をかざすと、幼い手に青い狐火が宿った。本来なら熱くて、近づけられただけで火傷してしまうのだが、巫女は全く意に介していない。


「甘いなぁ。私を誰だと思っているのかね?巫長さまだよ。かわいい子狐の火くらい、なんということもないさ」
「…っ!」


こいつが巫女を束ねる者だと、認めるものか!めげずに抵抗する彼だが、巫長の前には敵わないようだ。妖狐よりも強い力を持つ人間など、ますます非常識にもほどがある。観念しておとなしくなった彼に、巫長は意外そうな顔をした。


「おや。今日はいつになく素直だね、佐吉?」
「…その名で呼ぶな」
「ふふ、やはり真名で呼ばれるのは嫌か?ならばもっと呼んでやろう。ほぉれ佐吉、かわいいなぁ佐吉、食べちゃいたいなぁ佐吉」
「連呼するな!うるさい!」


声こそ激しいが、されるがままになっている。その方が費やする労力が少ないことを、経験上知っている彼であった。というか、真名を知られている以上、ほとんど抵抗らしい抵抗ができないのも確かだ。


「はぁ…この白いふわっふわの尾、ぷにぷにの頬…たまらんなぁ」
「がむ」
「ふふ、噛むな噛むな」


頬をつつく指先に噛み付いてみたが、笑って流された。と、巫長の目がほんのり寂しげに細められた。


「…佐吉」
「なんだ」
「おまえは、大人になるなよ」
「…なにをいっている?」
「大人は色々混ざりすぎているからな。おまえは、真っ白なままでいてくれ。巫長さまとの約束」


この見事な毛並みのように。巫長はどこか感慨深げな声で言って、彼の尻尾を撫でた。


「…意味がわからんが、どちらにしろ私が大人になるころには、きさまは生きていないだろう」


妖狐が一人前になるためには、それこそ千年単位の時を有する。彼の尾はまだ1本。これが9本にまで裂ける頃には、この無礼な娘はとっくのとうに死んでいる。むしろ2、3度生まれ変われるくらいだ。


「分かっているよ」


それでも、言わずにおれないんだ。


愛おしそうに、娘はきゅっと彼を抱きしめた。最初の時とは違い、優しい力の入れ具合である。


「きさまのような者との約束など、しらん」
「そんなこと言って。なんだかんだで、おまえは約束を守る子だろう」
「…かってにそう思っていればいい」


つん、とそっぽを向いた彼に、娘は楽しげにのどで笑い、白い髪にそっと頬を寄せた。




――――――――――
最近、妖怪パロに凝ってます。色々ネタはあるのに、文書として起こせません…。で、もごもごしてたら、ちびっこ妖狐な三成をモフりたくなったので勢いだけでガリガリ。巫長さまは大人なので、色々世間を知ってしまって嫌気がさしちゃってるんだろうなぁと思います。九尾の狐な三成をモフる幼女夢主とかもいいなぁと密かに思ってます。では、読んでくれてありがとうございました。

20140228




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