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※『Papers,Please』パロ
※夢主が入国審査官



その日の業務終了を告げるサイレンの音が、あたりに響いた。


「明日の朝6時にまたお越し下さい」


続いて、入国審査室の屋根に取り付けられたスピーカーから、女性の声がする。こちらとあちらを隔てる壁の前に長蛇の列を作った旅行者たちは、そのアナウンスを聞いてそれぞれに帰っていった。明日こそは審査を受けられると信じて。ここは、とある国の国境である。数年間に及ぶ戦争が終わり、やっと国内への立ち入りが許されたばかりという情勢のおかげで、入国するには入国審査官の書類審査に通らねばならない。強固な鉛色の壁を越えるべく、毎日審査室の前では入国希望者たちが列をなすのだ。入国審査を担当するのは、最近配属された女性審査官で、ファーストネームはなまえといった。彼女は、今日も今日とて家族のために労働を終え、椅子の上で思い切り伸びをした。


「っあー、今日も終わったぁ」


始業から終業まで、ひたすら書類不備がないかどうか探す仕事は、割に疲れるものだった。とにかく肩と首と目の奥が凝る。残業がないだけまだいいかもしれないが、給料は完全に出来高制であるため、いかに多くの旅行者をさばくかが大事になってくるのだ。給料には不満もあるが、これも全て自分と家族の生活のためだ。文句は言っていられない。


「さて、帰るかな」


荷物を持って審査室を出る。しっかり戸締りをしてから、なまえは歩き出した。すると、前方にいた3人の警備兵のうち、一番若い兵士がこっちに寄ってきた。他の兵士は銃を持っているが、何故かその兵士だけ刀を携えている。なまえは彼に向かって軽く手を上げた。


「三成ー、お疲れさーん」


友人の三成だった。彼はなまえと同じ村出身であり、彼女が審査官になるのとほぼ同時期に国境警備に配属された。同郷のよしみで何かと話すようになり、始業前と終業後の雑談はもう日課となりつつあった。


「今日もトンデモ旅行者ばっかりだったよ」
「パスポートの偽造3人、指名手配犯1人、密輸品の持ち込み2人だったか。愚昧な連中だ」
「なんで皆さんせっせと違法なことしちゃうのかな、審査してる身にもなってよねー……拘束はオイシイけど」
「何か言ったか?」
「い!いいえ、何でもないです」
「?……それより、全く今日の逮捕者たちは下らんな。あんな児戯にも等しい偽造で、なまえの目を逃れられるとでも思っているのか」


どうやら、仕事ぶりをすごく信頼されているようだ。しかし、彼が知らないだけでたまにミスはするし、場合によっては本来入国できない人を通すこともある。ついでに何かの事情で臨時収入が入っても、上官には申し出ず、財布の防寒具として用いている。だが、せっかく高評価を頂いているのだから、黙っておくことにした。


「三成は?もう上がり?」
「ああ。今日は、定時で終業の許可を頂いている」
「じゃ、うちで夕飯食べてかない?今日、お姉さん頑張っちゃったからさ。食費切り詰めなくてもいいし」
「しかし…」
「左近も待ってるし。この前うちに来た時以来、みつなりさま次いつ来るのーってうるさいんだよねぇ」


左近とは彼女の末の弟である。幼い彼には、国家のために仕事をしている姉や三成が英雄かなにかのように見えたのだろう。


「そういえば、この間剣術覚えたいって言ってたな。三成、教えてあげたら?」


いたずらな響きを込めてなまえが言うと、三成は若干表情を緩ませた。


「…手加減はしない、と伝えておけ」
「了解です」


三成が先生って、命がいくつあっても足りないよね。そんな冗談を言っている彼女の隣で、三成は知らず知らずのうちにほんのりと笑んでいた。



―――――――――
Papers,Pleaseパロでした。入国審査官になって、ひたすらスタンプをぺたぺたしたり、パスポート偽造の容疑者をしょっぴいたりと絵面は地味ですが非常に面白いゲームです。これやったことある方いらっしゃいますかね?いたらお友達になってください。ちなみに、三成はSerguポジです。フラグ大連立なあいつです。そうすると、Elisaポジは誰でしょうかね?それから、余談なのですが、最近某動画サイトでゆっくり実況を始めました。編集たのしす。では、読んでくださってありがとうございました。

20140319




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