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はなことば のちまき様へ、1周年記念
※ゲルテナの作品と受けギャリー




「か…返してよ!」


彼女の手にあるバラの花。深い青色にうっすら光って見えるそれは、ため息が出るほど美しかった。


「なんと美しい…」


彼女は、バラを色々な角度から眺めながらうっとりとした表情を浮かべている。


「妹たちから話を聞いた時から、ずっとこの瞬間を待っていた。青いバラ…なんという美しさだ。この素晴らしさを表現できない己の語彙力のなさが悔やまれるな」
「ちょっと、見てないで返して!」


彼、ギャリーにとってそのバラは命も同然である。花びらを千切られれば四肢を痛みが遅い、最終的には生命を散らされることになる。そんな大事なものを、彼女にとられてしまっていた。イヴとメアリーと離れ離れになってから数々の仕掛けを解き、ちょっと休憩するつもりで思わずうとうとしてしまったのが悪かった。体を走った鈍い痛みに目をさませば、目の前に彼のバラを持った若い女性が座り込んでいたのだ。透き通るような肌と浮世離れした美貌に、彼は見覚えがあった。このおかしな世界へ来る前、ゲルテナ作品群の中に彼女と瓜二つの絵画があった。タイトルは…確か、


「なまえ、」


絵画の名前が書かれたプレートを思い出し、作品名を口にする。すると、彼女がやっと彼の方を向いた。


「ん。何だ、ギャリー」
「何だ、じゃないわよ!バラ返しなさい!」


彼が身を乗り出して手を伸ばしてくるが、彼女はひょいっとバラを遠ざけた。ついでに、空を切ったギャリーの手首を掴んで引き、床の上に倒した。そして上に乗ってくる。


「ちょっ…!な、なにするの!」
「そこで大人しくしていろ。痛かったから言うんだぞ」


親切なのかなんなのか分からない。とりあえず、ギャリーはバラをどうにかされそうで気が気ではない。うっかり花占いでも始められたら、たまったものではない。


「これまで様々な色のバラを見てきたが、やはり青が一番好ましいな」


細い指先で花びらをそっと撫でる。途端、ぞくりと背筋が粟立った。


「…っ…!?」
「…うん?どうかしたか」


彼の反応に目ざとく気付き、なまえが見下ろしてきた。


「な、なんでもないわよ…」
「…ほう?」


にこりと微笑む。そして花びらを1枚つまみ、軽く引っ張る。


「…っ、あ…!」


痛みと何とも言えない感覚に思わず小さく声が出た。するとなまえがいっそう楽しげに笑う。


「ふむ。バラはこういった使い方もできるのだな」
「…な、なに…」
「ギャリー。私に良い考えがあるのだが」
「どうせ、ロクなことじゃないんでしょ」
「まぁそう言うな」


彼女は青いバラを口元に寄せた。悔しいが、息を呑むほど美しい。


「その1、花びらが千切れない程度に引っ張り続ける。その2、1枚だけ残してむしって花瓶に活け、またむしるを繰り返す。どちらか選べ」
「その3、バラをあたしに返して解放するでお願いするわ」
「心得た」
「いいのかよ」


思わずキャラを崩してまでツッコミを入れた彼に、なまえはのどの奥で笑った。


「なかなか面白い案だったのでな」
「うっかり採用してもいいのよ?」
「そうだな…それも良いだろう」


本当に意外な一言だ。何か裏があるのではと見上げると、更に意外なことにバラをギャリーの胸の上に置いた。


「これは返そう」
「…え?」
「私は、青い命のバラを飽きるまで眺めたかっただけだ。貴重な花びらで占いをするつもりなどない」


そもそも私は、占いの類いが好きではないのだ。


「まぁ、その花びらが散っているところを見たいという気もするが」


彼女の妹たちのおかげで、冗談に聞こえない。表情が引きつるギャリーの頬を、なまえがそっと撫でた。


「心配するな。君とイヴという少女に危害を加えることはしない。少なくとも、私はな。妹たちにもできる限り我慢するよう言っておこう。私はあまり威厳のないお姉ちゃんだから、効果は薄いかもしれないが」
「…メアリーは?あの子も一緒にここから出るのよ」


すると、彼女は一瞬不思議な顔をした。


「…そうだな。私が言うより自分で気付いた方がいいか」


口の中で何か呟いたが、ギャリーには聞こえなかった。


「何か言った?」
「いいや?なにも」


あっさりと言って、何故か身をかがめる。何をするのかと思えば、胸の上に置かれたバラの、青い花びらを唇で挟んだ。びくっ、と彼の肩が跳ねる。


「なにす、」
「危害を加えない代わりだ。もう少し付き合ってもらうぞ」


そう言って、また違う花びらを。いちいち皮膚がざわりとして、律儀に小さく声を上げてしまう。それがいっそう彼女を楽しませることになっているのはよく分かっている…けれど。


「君は本当にかわいいなぁ。好みド真ん中だよ」
「…っ、うれしく、ないわ」


浅い呼吸で、それでも抵抗する彼に、彼女はにっこりと微笑んだ。




幕間のローズペタル


―――――――――
はなことば のちまき様へ捧げます。受けギャリーの甘めというお話しでしたが、何だか甘さと受け受けしさが足りなかった気がします…。それでも、受けギャリーとちまき様への愛だけはぎゅっぎゅと詰め込みましたので、気に入って頂けたら幸いです。
サイト開設1周年、並びにお誕生日おめでとうございます!いつも素敵な受けギャリーを拝読してニコニコニヨニヨさせて頂いております(笑)そして、いつも丁寧で温かいコメントレスをありがとうございます。こんな天井裏の民ではありますが、これからも陰ながら応援しております。お互い、体に気をつけてサイト運営をしていきましょうね。それでは、長々と失礼しました。

20140108 桜雲 拝


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