水族館?ええ、もちろんひとりで参ります。

友達がいないのではないですよ。我らが生徒会長さまやダンボールの君、熱き血潮の君、似非インテリメガネなど、わたくしと仲良くして下さる方はいらっしゃいます。それでも、水族館や遊園地のようなレジャースポットはひとりで行くに限るのです。周囲から注がれる、好奇と憐憫がないまぜになった視線の中、信じられるのは己とこのカメラだけ。なんと血湧き肉躍る状況でございましょう。

このように、自分で言うのもアレですがなかなかにストイックなところのあるわたくし岡志奈子、散々エラそうなことを申して参りましたが、生まれてたかだか18年でございます。平たく(決して体型の話ではありませんよ)言えば、小娘なのです。凹凸激しく言っても小娘です。失礼しました、回りくどいのは良くありませんね。つまるところ、わたくしも十八の乙女、そういうオトシゴロなのでございます。


「…大丈夫か、お嬢ちゃん」


突如わたくしのうら寂しい顔面を襲来した海水を、代わりに受けて。髪の先からぽたぽたと雫を滴らせるその様は、誰もが知るかの慣用句がぴったりと当てはまります。

足を運んだ水族館のアイドル、シャチのエールちゃんが人を殺めたと聞き、いてもたってもいられなくなったわたくしは、こっそり水族館内部に潜入しておりました。警察の方や青と黄色の怪しい男女に見つからないようにショーステージまでやってきた時、何故かわたくしの目に宙を舞う透明な液体が見えたのでございます。太陽がきらきらと反射して、それは綺麗な光景でした。

次の瞬間、視界を黒い何かが覆ったと思ったら―――というのが、事の顛末です。


「あ、あの…」
「濡れてねェか?」
「え、あ、はい…だいじょうぶ、です」
「ならいい」
「どうして…」
「制服クリーニングに出すなんざ面倒だろ?」


わたくしを水から守ってくれた彼は、こちらの衣服を指さしました。そういえば、学校の制服を着たままでした。見ず知らずの小娘にそこまで気遣いを…!感激です。タイタニ○クより感動しました。


「それと、今日は閉館日だ。さっさと帰んな」


最後にニヒルな微笑を残して、彼は去って行きました。やたらと声の大きい、白いオジサマを連れて。


「………」


彼の歩いた後に薄く続く水滴を目で追いながら。心の臓が必要以上にはりきり、送り出された血液が全身を駆け巡るのを感じました。すみません大丈夫ですか、という慌てた女性の声など、耳にも入りません。

ええ、さようでございます。この出来事を境に、わたくしは彼――夕神迅さまに恋をしてしまったのです。




美丈夫発見!
(目標をセンターに入れてシャッター!)



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原題は『美少年発見!』ですが、夕神さん少年じゃないよねということでちょっと変えました。




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