頭上から聞こえたかと思えば目の前に真っ白の薔薇の花束。
差し出してきた真白の方を見て思わず笑っちゃった。
「俺の中ではあんまり誕生日もバレンタインも変わんないけどなぁ。今年は薔薇なんだ」
真白から花束を受け取って香りを楽しむ。
真白は毎年必ず白い花束をくれる。
何でも、自分の名前に因んでいるらしい。
結構花好きだから花束って嬉しい。
「真白にはこれな。チョコマドレーヌ…」
真白用の箱を差し出したらそのまま手を取られて手の甲にキスされた。
何てキザな事を…!
しかもそれを自然とやってのける上に違和感を感じない真白が凄い。
「燈瑪、白い薔薇の花言葉知ってる?」
「花言葉?」
今まで気にしたことなかったから知らないや。
赤い薔薇は毎回父さんが母さんに花言葉を叫びながら渡してるから知ってるけど、白い薔薇は何だろ。
「花言葉は何?」
「それはね、私はあなたに「いつまで手ぇ握ってんだ?」
ちょっとワクワクしながら聞いてたら何故か不機嫌気味の帝に体を引き寄せられた。
自然と真白から離されたんだけど…花言葉、気になる。
「帝、邪魔をするなよ」
「煩ぇ。今から燈瑪に話があんだよ。テメーらさっさと帰れ」
「帝っちでも抜け駆けは「あ゙ぁ?」…帰ります」
帝って、誰が話してても話に割り込むの好きだな。
渋るアキの腕を引いて帰ってく真白と千尋を見送ってから帝に視線を向ける。
「帝、離して?」
「あ?……あぁ」
真白から離される時に強引に体を抱き寄せられたままの体勢だったから腰に回る腕を叩いて訴えたら素直に離してもらえた。
「燈瑪、こっちに来い」
呼ばれるままにスタジオ内にあるソファに座る帝の隣に腰掛ける。
「俺からのプレゼントはこれだ」
ちょっと強引に渡されたのは飾り付けもされてない小さな箱。
包装しない辺りが帝らしい。
大切なのは中身だしね。
「…これって、鍵?」
箱を開けたら何の変哲も無い普通の鍵。
でも、何の鍵?
「何の鍵?」
「俺の隣の部屋の鍵だ。隣の部屋も買って収録が出来る環境に整えた。必要な機材もちゃんと設備してあるし防音もしてある」
驚き過ぎて帝を凝視してしまう。
帝の住んでる部屋ってすっごく高い高級マンションだ。
自分の部屋だけでも高いのに隣の部屋まで買って収録用に改装したなんて。
そりゃ帝なら楽勝かもしれないけど。
「本当は誕生日にやりたかったんだが工事が間に合わなかったんだよ」
「み、帝、流石にそれはやり過ぎじゃ…」
「燈瑪が歌う為だ。これぐらいなんてこたぁねぇ」
帝はやっぱり帝だ。
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