Trick or Treat. | ナノ
 



前略
明日はいよいよハロウィンですね。
先日、買い物に行った時にハロウィンのグッズを見掛けたので思わず買ってしまいました。
お菓子を持っていないと悪戯をされてしまうそうです。
明日はポケットにお菓子を忍ばせておこうと思います。



昨日貰った手紙の内容を思い出して思わず笑みが零れた。
悪戯されない為にお菓子を持っていようなんて思う彼の言葉が可愛かった。
そんな彼を見習って今日は俺もポケットにキャンディを忍ばせてる。
彼はどんなお菓子をポケットに入れているんだろう。

「そこのせーんぱい」

「え?」

トイレの帰りに一人で廊下を歩いていると不意に声を掛けられた。
その声の主はいつぞか向日葵を見に行った時に擦れ違った一年の子だった。
何で彼が俺に声をかけたのかが分からず固まってしまった。
周りも彼が平凡な俺に声をかけた事に驚いて視線を向けている。

「Trick or Treat.」

綺麗な発音で囁いて彼は笑みを浮かべて片手を差し出した。
何で俺なのかなって思っていると彼は首を傾げて顔を覗き込んできた。

「んー?先輩ならー、お菓子持ってそうだなーって、思ったのになぁー」

緩い口調で紡がれた言葉に俺の疑問は解決された。
彼は子供のようにただお菓子が欲しいだけなんだ。
彼には俺はいつもお菓子を持っていそうに見えるらしい。
ポケットに手を突っ込んでキャンディを取り出すと彼の手に乗せた。

「はい、どうぞ」

「やっぱり持ってたんだぁー。先輩ありがとぉー。これ、俺からのお返しでーす」

ただのキャンディなのに彼は至極嬉しそうに笑って俺の手を取りそっと何かを握らせて一年の教室の方へと帰っていった。
周りから羨む声や彼にお菓子を渡そうとする人達の中握った手を開いた。
彼はキャンディのお返しにとマカロンを渡してくれた。
渡したものよりも良いものを貰ってしまって彼に申し訳なく感じる。
でも凄く嬉しい。マカロンは俺の一番好きなお菓子だ。
まさかキャンディを持っていたお陰でマカロンが手に入るなんて。
この出来事が嬉しくて早速手紙に書こうと思わずにやけながら教室に向かって足を進めた。



拝啓
俺も君を見習って悪戯されないようにキャンディをポケットに入れてみました。
そしたら君と同じ一年の子に「Trick or Treat.」って言われたのでキャンディをあげるとお返しに大好きなマカロンが貰えました。
君が俺にハロウィンを教えてくれたお陰です。ありがとう。
君はどんなお菓子を持ってたの?




Fin.




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