先輩はソーダとかコーラとか炭酸とか、そういうタイプの飴は苦手。前にいりますか、って聞いた時に苦手だからと言われて知ったことだ。

「矢崎ぃ、課題の答えサンキューな。あとこれ、お礼だから」
「いや、いいんだけど。西谷、俺炭酸の飴は……」
「いやいや助かったし。じゃあな!」
「…………あいつ……」

貸していた答えの冊子と共に炭酸オレンジの飴を渡された先輩が、憎々しげな視線を閉じられたドアに送る。西谷先輩は今までにも何回か矢崎先輩から物を借りているし、そのたびに何かを渡していたから何回も炭酸系は無理だと聞いていると思っていたけど、知らないのだろうか。西谷先輩なら聞いても忘れてるのかもなあ。
手の中の飴を仇のように睨む矢崎先輩に、「先輩食べれませんよね?俺がもらってあげましょーか?」とふざけて声を掛ける。食べれない物を貰っても処理に困るだろうし、俺はそういう飴が好きだから丁度いいかと思ったからだ。けれど先輩は表情は崩さないまま予想と違う答えを返した。

「あー、いい。食うから」
「え?先輩苦手じゃなかったですっけ、勘違い?」
「いや苦手だけどなすげー嫌いだけどな」
「じゃあなんで?」
「だって、ありがとうって思ってたくれた物だろ」

だから食う。言い切って口内に飴を放り込んだ先輩はめちゃくちゃかっこよかった。この人は綺麗な心を持ってるんだなあ、と恥ずかしいことまで思ったりした。その目に俺はどんな風に映るだろう。水晶みたいにただただ透明な深さのある先輩の目に。
眉を顰めながらも不味いとは言わないで、黙々と舐めてる。噛めばいいのに、と言うと舐める派だからなと反論された。

思えば多分この時に、おれは先輩を好きになったんだ。
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