FF6SS
2023/10/20 08:25

マッシュは死んだ。倒壊した家の下敷きになった。
エドガーは戦闘不能状態で軽トラックの荷台で気を失っていた。もともとは助手席にいたのだけれど、図体がでかくて邪魔だったから外に追い出した。そしてオレは運転していたからよくわからないが……たぶんエドガーは死んでいないはずだ。たしか。きっと。恐らく。そう願いたい。願う。
軽トラックを転がしながら、エドガーを追いやって助手席に座るセリスに目をやると、呆然と空を見上げていた。何を考えているのはよくわからない。
いや……多分、オレと同じことを考えている。彼女は今この瞬間、どうしようもないほどに、取り返しのつかない事態を招いてしまったことを後悔しているだろうし、同時に自分の浅慮な行動によって大切な仲間を死地へ追いやった事実に胸を痛めていることだろう。でももう遅い。手遅れだ。そんなことは彼女自身もとっくに気づいているに違いない。
だから今はただ呆けることでしか現実逃避する術がない。それだけなのだろう。その気持ちはとてもわかるし理解できたけれど、しかしオレは彼女を慰めるような言葉など持ち合わせていなかった。何せ何もかも手遅れだったからだ。
ファルコン号を拝借することも叶わなかった。ダリルの遺族が相続してしばらくは大切に管理してくれていたらしいが、固定資産税を払えなくなって売り払われてしまったそうだ。ダリルの墓すら残ってはいなかった。普通に考えて飛空艇格納庫を改築したばかでかい墓なんて、管理も大変だしな。化け物が沸いても怖いし当然といえば当然の結果ではあると思うけど。
こんなことなら早く自分が買い取っておけばよかった。悔しいし悲しいし腹立たしいしムカつく。本当に馬鹿みたいだ。もっと上手く立ち回れば何か変わったかもしれないのに……。そんな考えばかり頭に浮かんでくる。後悔しても仕方がないことなのに、どうしても考えることをやめられない。
「……」
オレたちは無言のまま、赤い空の下をひたすら走り続けた。目的地はない。この世界の何処かにいる仲間を求めて。



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