――お前は俺の愛玩人形<モノ>だ。
男<ワタシ>を犯しながらそう言った男がいる。
私の上司であり、我がマルクト帝国の皇帝陛下であるピオニー・ウパラ・マルクト9世。
正直、その言葉を聞いて私は呆れて声も出なかった。
この男が異常者だと悟るには十分な要素を持つ言葉だった。
体調不良で仕事を2、3日休んだ時のこと。
「…ゴホッ…」
最近、食事も摂ってなければ睡眠も十分に摂っていないという不健康な生活を送っていたせいで病弱に磨きが掛かってしまい、風邪で倒れたという何とも情けない状況。
「…っ……」
呼吸する度に締め付けられる胸が呼吸を妨げる。
「…は、あ…」
熱に浮かされ、自由のきかない体。起きることさえもままならず、連絡することも出来ない体に大きな溜息を吐く。
そんな中、誰もいない筈の玄関から音がする。
こんな時に限って…と風邪に伏した体を恨みながら段々近付いてくる物音に耳を傾けた。
「悪名高い死霊使い<ネクロマンサー>が風邪でぶっ倒れるとは…」
そしてずかずかと無遠慮に部屋へ入って来た人物――ピオニー・ウパラ・マルクト9世。
また五月蝿いのが来た、とピオニーを不機嫌丸出しで睨み上げる。
「そんな顔すんな。風邪薬買ってきてやったから」
ほら。
膨らんだビニール袋をジェイドに見せつける。
「そんなことっ、してる暇があるなら…仕事を、してくださっ、…」
熱に因って潤んだ瞳で睨んでも効果は無い。寧ろ逆効果である。
「そう、睨むな。誘ってるようにしか見えねぇぞ?」
「ふざけるのも、大概に…っ」
「一々、怒るな。熱が上がる」
ジェイドの髪を掻き上げ、額に己の額を当てた。額は熱く、相当の高熱だということが手に取るように分かる。
「とりあえず、脱げ」
「……は?」
いきなりの脱衣命令に呆気に取られ、言葉が出ない。
この男が何を言っているのか理解出来なかった。
何故、自分が服を脱がなければいけないのか。
「座薬だぞ?脱がねぇと挿入<い>れれねぇだろ」
「なっ…」
ジェイドの思考を汲み取ったピオニーは悪戯っ子の如き笑みで驚愕すべき言葉を吐いた。
風邪薬を買ってきてもらったことには感謝だが、まさか座薬を買ってくるとは思ってもみなかった。
「脱げないなら、俺が脱がしてやるよ」
不敵に唇を歪めながらジェイドの上着のボタンを一つずつ外していく。
「じ、自分で脱ぎますから、手を離して下さい…」
抑制の言葉を吐くもピオニーの手は一向に止まることを知らず、遂には全てのボタンを外し終わり、下衣に手を掛け始める。
「ちょっ、陛下…止めて下さい…!」
「お前、見掛けによらず敏感だな」
此処、勃ってる。
おもむろに芯を持ち始めたジェイドの陰茎を下衣の上から握り、上下に扱く。時間が経つに連れ、角度を上げていく。
「…ん、ぁ…へぇか…」
「お、濡れてきやがった」
先走りが下衣に染みを作る。ピオニーはそれを面白がって更に強く陰茎を扱く。
「ふ、くぁ…やっ……」
時には根本の嚢を握り、時には先端に爪を立てたりと予測不能な手の動きは着実にジェイドを快楽へ追いやっていった。
「へい、か…イっちゃ…」
「勝手にイくなんてこの俺が許すと思うか?」
一度、手を離して袋から包帯を持ち出すとジェイドの根本を縛り上げ、更には細い綿棒を尿道へと埋めた。
「ぐ、ぁぁああっ…!」
いきなりの放出妨害に体が痺れ、視界がちかちかと明滅する。
熱で体が動かないことをいいことにピオニーはジェイドの足をM字開脚にし、包帯でベッドの脚に固定。ついでにと言わんばかりに腕までもベッドの脚に縛り付ける。
完璧に自由を奪われたジェイドは為す術もなくされるがままピオニーに翻弄される。
「挿入れるぞ」
「や、やめ…!……ひっ、あ゙、あああ――!」
膝裏に手を添えて、慣らしてもいない後孔へ陰茎を無理矢理押し込んだ。
初めてくわえ込んだモノの驚くべき質量に後孔が嫌な音を立てる。
「…へ、かぁ…っ!…抜、て…!」
「苦痛そのものって顔してんな」
「これ以上のっ、苦痛など…ありませ、んよ…!…あひっ、」
息を引き攣らせ、呼吸困難に陥るジェイド。
その様子を見て綿棒を上下に動かすピオニー。
擬似的な射精感に苛まれる。
けれど吐き出すことの出来ない苦しみに喘いだ。
「ぬいて、くださっ…」
ピオニーが腰を動かす度にみちみちと悲鳴を上げる後孔。玉のような汗を浮かばせた額。
「締め付けて離さないのはお前の方だぞ?」
苦痛に歪んだ顔に舌を這わせ口付けをする。
角度を変えて舌を入れ、ジェイドの口内を蹂躙する。
「ふっ、…ふぁ…」
どちらとも言えない一筋の唾液がジェイドの顎を伝い、胸の上に落ちた。
「腸内<ナカ>に射精<だ>すぞ」
「待って、くだ…――あっやぁぁぁ…!」
背筋が弓なりに曲がる。
腸内に放たれた熱を持つ液体によって射精せずに達してしまったのだと直感的に理解する。
「何だ、射精さないでイったのか」
嘲りを含んだ言葉に羞恥で体温が急激に上がっていくのがわかる。
「射精したいか?」
こくこくと何度か小さく頷くとピオニーはしゅるりと根本に食い込んでいた包帯を取り去り、強く上下に扱く。
爆発的な射精感に襲われるも尿道に突き刺さった綿棒が射精の邪魔をする。
「ゔぁ、ああ――!めんぼっ、抜いてください…!…ひっ、…」
「なら、言ってみろよ。私は貴方のものですって」
そうすれば取ってやると言い放った男に、快楽に震える脳の片隅で狂気を感じた。
皇帝ともあれば言い寄って来る女など山ほどいるだろうに。
何故、男である私なのか。それだけが唯一、脳内に残った疑問だった。
「…わたし、は…あなたの、ものです……」
焼けるほどに熱い陰茎の熱を吐き出したくてピオニーの希望そのままの言葉を吐いた。
「お前が俺の配下に下った時からお前は俺の愛玩人形<モノ>だって決まってんだよ」
耳元で囁きながら勢いよく綿棒を抜き去り、律動を強くする。
暫くしてピオニーは再びジェイドの腸内に、ジェイドは自分の白い腹に、それぞれ白濁を射精した。
「ジェイド、愛してる…」
そう言ってまたジェイドの唇に唇を押し当てる。
そして首元に噛み付き、紅い痕を残した。
今の私の頭では思考を巡らすことなどやるだけ無駄だった。
けれどやけにはっきりしていることが一つある。
男<ワタシ>を犯し、快感を得る彼を異常者と呼ぶのなら、男<カレ>に犯され、快感を得る私もまた異常者なのだろう。
ピオニーの腕に抱かれながら酷い眠気に身を任せ、静かに目を閉じる。
それに合わせてピオニーもまたジェイドを腕に閉じ込めたまま目を閉じた。
本当は、見舞いなんてただの口実。
2009/05/08
▽後書き
あー…遂にやっちまったぜ。とか言いつつもこれ書いたの去年じゃヌェかと。しかも確かこれが初BLだった、気が←
そして座薬はいなくなった(ぇ
▽おまけー。
「お前、よくこんな風邪に耐えられたな…」
翌日、見事にジェイドの風邪をもらい床に伏したピオニー。
「おや、頑丈だけが取り柄の貴方が風邪に倒れるなんて…明日は雪でしょうかね」
ピオニーに風邪をうつして完全復活を果たしたジェイドは悪戯っ子のように笑った。
「あ゙ー、死ぬー…」
「風邪を引いてる人間に、あんなことするからです。自業自得です」
口ではなんだかんだ文句を言いながらもてきぱきと看病するジェイドのツンデレっぷりはまたしてもピオニーの欲情を煽る。
そして欲情のまま行動に移したところ、ジェイドの秘奥義が炸裂。うっかり地獄を見たピオニーはひそかに報復を企て、それを性懲りもなく行動に移し、また死にかけたのは言うまでもない…。
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