英覚
※エロ



「君は、馬鹿なんだね」

いつもなら言い返す言葉も、喉が圧迫されて全く意味のない、かはっと空気が洩れる音しか返せなかった。
見えるのは、首から伸びる腕が、目の前の男の胴体に繋がっている事だ。
何が男の、スプレンディドの心情の線に触れたのか、簡単だ。

足元に転がる魂が無くなった肉の器。辛うじて人の形を成しているだけのそれに、俺は喉が解放されればケラケラと笑っただろう。いや、ディドの眉間のシワから、今現在も口だけで笑っているのだと分かる。

「なんか、いや、なんで…うーん、エロい気がする」
「くっん、はぁっ…!」

馬鹿だこいつ。
こいつに殺意があれば、きっと俺はもう死んでいる。顔が鬱血して紫になり、口から泡を吐き、目玉をぐるりと回して黒を隠して白目を向くだろう。
こんな空気の行き来を制限されている苦しさなんて無いだろう。
ディドは手をユックリ離す。ユックリだが、急激に入って来た空気は肺に毒で、俺は地面に膝を付いてげほごほと咳を繰り返した。生理的な涙が膜を張り、ボロッと零れた。
ああ、滑稽。

「ああ、滑稽」
「いっ、んんっ…!」

あ、被った。
髪を掴まれ、顔を無理矢理引き上げられた。
噛み付くように、実際勢い良すぎて歯がガチンと当たるキスがおりてくる。
舌を絡まさられ、歯を舐められ、たまに舌をやわく噛まれ、咥内が犯される感覚にビリビリした快感を拾っていた。
首の後ろを指一本で辿り、たまに撫で、耳の後ろを通る手にぞわぞわと尾てい骨から背筋を走り、頭をぐちゃぐちゃにする熱が走る。

「軍人くんって他に男性経験有りそうだよねー」
「ふあ、ん……。…はぁ、無いに、決まってんだろ?軍人が男性もイケるのは、本当だけどなぁ。毎晩あっちこっちのテントでアンアン聞きたくもねー男の喘ぎ声だらけさ」
「それはそれは、君の他の男性経験無しに有り難がれば良いのか、君の災難を笑いながらご愁傷様と言えば良いのか」

最初から前開きっぱなしの軍服に手が滑り込み、タンクトップの上から胸の突起をなぞられる。
それだけではしたなく喘ぎそうになる程には慣らされた体に忌ま忌ましさを感じる。
むしろ、それを匂わせる空気にもう若干半勃ちになるくらいには慣らされている。
内側からぐちゃぐちゃにして欲しい。奥まで快感を暴いて欲しい。
きゅうと締まる中に我慢出来ず、軍服を剥いでタンクトップを脱ぎ捨てた。
立っているディドの足を払い、倒れた上にのしかかる。べろり、と唇を舐めてディッドのズボンを下着ごと降ろしてディッドの自身を取り出す。

「相変わらずでけーな」
「相変わらずスイッチ入るの早いね」
「うるせーよ、好きなくせに」

ディドの自身を口に含み、舐めたり吸ったり扱いたりとして勃たせる。たまに手が髪をかき上げ、ついでに耳の後ろを撫でるのを必死に堪え、恨めしげにディドを見れば、くすくすと笑われてしまった。
その余裕が苛立ちを煽り、ディドの自身をはむっと甘噛みする。
息を詰めたような声を出すディドに内心ほくそ笑み、調子に乗ってはむはむと甘噛みを繰り返した。

「ちょっ、とっ…!」
「む、あ、んんっ…」

ぐいっと無理矢理上げさせられた顔に、温い白濁が勢いよく掛かる。半開きだった口に苦味が広がり、唾液と混ぜて飲み込んだ。ついでとばかりにディドの手についた白濁も舐め取る。

「まじぃ」
「…でも舐めるんだね。なんかエロい」
「なに、突っ込みたい?」
「突っ込んで欲しいの間違いじゃない?」

こいつ本当に噛み切ってやろうか。
苛立ち任せに指をガリッと噛んだが、血の味はしなかった。

「ムカつく…」
「光栄だね」
「っあ、ひんっ!」

苛立ちに任せて開いた口からは、グリッと刺激された自身に対する快感を表す声がそのまま飛び出す。
ぽた、と垂れていく唾液に、急いで開きっぱなしの口を閉じる。

「う、ンんっ、ひうぅ…!」
「声、出さないの?」
「いっ、ぁあっ、ゃあんっ!」
「ふ、ぐしょぐしょ…」

ぐち、と半勃ちだった自身は、膝で刺激されただけで完勃ちになる。
抑える気だった声は、ぐちっとカウパーに濡れた下着が自身に擦れる感覚に呆気なく崩壊し、漏れた声に満足げに笑うディドが俺の耳に囁く。じわりとそこだけ濃くなった軍服を見た途端、カァと熱が集まった。

「このままイキたい?」
「っ、んんっ、やぁ…!」
「じゃあさ」

自分で慣らして?
耳に直接吹き込まれた言葉に、また熱が集まる。今度はぶわりと、体中。
早く、と急かすディドの声に、ぐらぐら沸騰したみたいに揺れていた熱が吹きこぼれる。
後口を軍服越しにグリッと弄られ、熱い息が漏れてしまう。

「どうする…?」
「っ…、む、りに…」
「なんで…?」

わざと低くされた声は腰にびりびりと響き、思わずぎゅうっとディドにしがみつく。

「あ、弄った、ら、…イっちゃ、…っ」

実際ディドの行為だけでイキそうな自身は、すでにカウパーとちょっと混じった白濁でぐしょぐしょだ。
下着が意味を成さないほど濡れに濡れた状態は酷く気持ち悪い。
そこでふと気付く。ディドが固まっている。

「でぃ、ど…?死ん、だか…?」
「死んでないよ…」
「…?でぃど…」

反応は返すくせに、今だ固まったままのディドに焦れる。
ハッキリ言って、生殺し状態だ。
イキたいのにイケず、イカされそうなまま放置。

「でぃどぉ…」

待つ状態に切なさを感じて縋り付くようにディドに抱き着く。
時間が経てば萎えるはずの自身は全く萎えず、むしろ期待でそのままイケそうだ。

「でぃど、…でぃどぉ……」
「っあー、もう…っ!」
「へぁっ?!あや、ちょっ、でぃど…っ!ひああああぁっっ!」

切羽詰まったディドに、軍服と下着を一気に落とされ、慣らされていない後口に一気に突っ込まれた。
ゴリゴリと中を抉るディドの自身に、バチッと目の前に白が瞬く。ついでとばかりに前立腺を抉られ、快楽に自身から白濁が飛び散った。

「ひ、あ…っ」
「ご、め…!ちょっと、あんな声で呼ばれたら、我慢、効かない…!」
「あっゃ!イッた、ばっかあぁっ!うごかな、やあっ!」

ディドは切羽詰まった声と切羽詰まった顔で俺を押し倒す。その際にグッと深く埋め込まれ、痛みより激しい快楽に思考も理性も焼き切れる。
イッたばかりの抜き差しは苦しく激しい快楽で、自然と涙がボロボロ零れてしまう。

「ひあっ、あっ、ゃあ、あんっ!」
「はぁっ、…ぐんじん、くん、」
「ひ、やぁっ!も、くるひ…!んあぁっ!」
「呼んで…っ」

呼んで?何を?
焼かれた思考と霞む視界、ぐちゅっぐちゅと響く卑猥な水音。
全部の神経を犯されている感覚で、頭がぐらぐら沸騰する。

「で、っど…!ひんっ、あ、あーっ!む、やぁっ!でぃ、どぉ!」
「うん、そう…」
「や、もっイくッ…!も、おく…!あ、あああっ!」

ゴリッと抉られた前立腺にまたバチッと目の奥が瞬き、俺はそのまま意識が沈んでいった。



「は、ぐちゃぐちゃ…」

射精した後の疲労感に白濁や汗でぐちゃぐちゃの軍人を抱き込んで目を閉じる。

『でぃどぉ…』

切なさと甘い吐息を含んだ声が耳に残る。
思わず慣らさずに入れてしまったが、いつもヤッているお陰か、全く切れていない。

「…軍人くんに、そんな風に呼ばれる、とか…」

襲ったのは本能となけなしの理性。それほどまでに、クる声だった。
本能の圧勝に終わったが。

「まるで、さ…」

世界中で私だけを一番求めてるって思わせる声。

「フリッピーくんの、なのにね…」

君が好きだよ。
フリッピーくんじゃなくて、軍人くんが。
愛おしさに抱きすくめる。

「愛してる」




僕らは滑稽ながらに愛を求めて求められるのです、だから僕は貴方が




___
…えろっ!です!
私的、ドエロ、です!
ここまで直接的に書いたのは初めてです。
なんか、えろは、途中で我に帰る物じゃないですね…

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