青ヨシ
※捏造
「死ね」
「本当にヨシキリの死ねってやっすいなぁ」
恋人からの暴言に青葉はいつも通りの笑みを崩さずに明らかに相手を苛立たせる為の言葉を吐き出した。くつくつと喉の奥で笑うのも恐らく同等の意味だろう。だが明らかなそれでもヨシキリには大分効力があった様だ。ヨシキリは苛立たしげに一つ舌打ちし、ガンッと空き缶を空中で蹴り飛ばしてごみ箱の近くに落とした。
「なんで今まで生きてんだよ…!」
「俺の人生を否定しないでくれないか」
「否定じゃねぇ、拒絶だ」
「…真顔で言われるとそれはそれで傷付く」
「拒絶だ」
「繰り返すな」
じとりと色んな感情がまぜこぜになった視線を青葉に向け、廃ビルの扉を開けるヨシキリに続き、青葉もその扉をくぐる。
「ヨシキリ」
「呼ぶな」
「おーい…」
「お前が」
青葉が階段に上ろうと足を掛けた瞬間、ヨシキリはクルリと青葉の方に向き直り、ギリッと奥歯が鳴る程噛み締めた。まるで続く言葉をかみ砕いて飲み込んだ様に。
「お前が…何?」
「何でも無い死ね」
ガンッと階段が軋む程苛立たしいと言わんばかりに乱暴に上っていくヨシキリの背中を数秒程見詰め、青葉はヨシキリに追いつこうと階段を二段飛ばしに上る。
「ヨシキリ」
「呼ぶな触るな殺す」
「ヨシキリ」
「…っんだよ!」
階段の踊り場にヨシキリの足が付いた途端青葉は後ろからヨシキリの腕を掴んで無理矢理振り向かせた。振り向いた時に足が階段の手摺りに当たったのかがこんっと大きな音が響いた。
「よ、し…?」
「当たった足が痛いだけだ!」
「いや、何も言ってない…」
「ファックっ!」
じわりとヨシキリの目に滲んでいる涙に青葉は驚愕が隠せず、目を見開いた。暴言を吐きながら片手でぐいっと目を拭うヨシキリはそれが引き金になった様にぼたぼたと涙を零し始めた。
「え、えぇー…?」
「見るな」
「いや、流石にそれは」
「やれば出来る」
「そりゃ出来るけど…」
軽口の応酬はものの数分で終わり、ヨシキリは涙を零しながら気まずそうに視線をあっちこちに飛ばし、ムスリと口を結んでいる。青葉は青葉で何か言うべきと言葉を探していた。
「な、なんで?」
「知るか!」
「いや知ってるだろ」
「お前がっ」
またさっきと同じ言葉に、さっきよりも切羽詰まった声と顔で、ヨシキリは半ば叫ぶ様に言う。青葉はそれを見て一段上って距離を詰めた。
「何?」
「お前、が…っ!」
「ヨシキリ」
「お前が、死んだら、俺は、大丈夫、なんだよ…っ!」
途切れ途切れになりながら言葉を紡ぐヨシキリに青葉は疑問符を浮かべ、続きを促す。
「なんでお前ごときに、俺が死にたくなるんだっ…!」
「…!」
「お前が…!」
反射的に青葉はヨシキリに足払いを掛ける。ガッと鈍い音が響き、反射的に受け身を取ったヨシキリは大したダメージも無く床に倒れる。
「なにっ…」
「ゴメン無理ヤバい」
「はっ?っん…」
青葉は倒れたヨシキリの顎を掴み、無理矢理向かせて噛み付く様にキスをする。くちゅ、と上顎を舌で撫でられる感覚にヨシキリはびくりと身体を震わし、我に帰る。慌てて青葉の肩を押すが逆に絡め取られる。
「…ふ!……っ!」
「は……、ちょっと考えて発言して…」
「…!はぁっ?!死ね殺す馬鹿っ!」
(可愛いとか思ってしまった…)
青葉はヨシキリの罵声等意にも介さずヨシキリの涙の跡を舐めた。
涙味
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泣く程好き