植松
※HERO短編
※「全ての希望にエールを」



自殺が終わったから、松下さんとは会えないと思っていた。だが特別長いとも短いとも言えない日数が経った後、約束を取り付けられる。コンビニに缶コーヒーだけ買いにくる。たまに電話してくる。出なかったらまた殴られるか頭突き。
あっという間にいつも通り。
呆気ないとすら感じる日常に、忙しさは変わらず、松下さんに凄いと言われた成績は下がらず。

「なんだかな…」
「おい植木奢れ」
「はいはい」

使い道が無い40万は松下さんのコーヒー代や昼飯代に消え、それを軽く塗り潰すバイト代が入ってくる為、増え続ける一方だ。そろそろ使い道を見つけないとなと考えはするが無趣味と言って良い自分には中々の難題だ。

「で、何だよ、なんだかなって」
「え?」

ピロンピロンとファミレスの自動ドアが鳴り、むわりと暑く、ベタリと肌に張り付く熱気を感じながら以外にも聞いていた松下さんがムスリといつも通りの顔で聞いてきた。

「あー、お金の使い道について考えていて」
「なんだそりゃ」
「無趣味なんで…」

怪訝そうな顔に睨まれながら外に出る。ギラギラと凶悪な程煌めいて熱を容赦無く降り注ぐ太陽に迎えられ、ダラダラと歩く足が心なしか更にしんどそうになった。

「シャキシャキ歩け、見てるだけで怠い!」
「すいません!」
「直ぐ謝るな死ね!」

どうしろと言うのだ。太陽と松下さんからのダブル責め苦に頭痛を感じながら歩く。
ふと松下さんの長袖が気になった。

「松下さん暑そうですね」
「死ぬほど暑いよ。死なないけど」

死ねるかもなぁ、なんて笑った松下さんにそうかもしれませんねと言ってみた。

「太陽爆発しねぇかな」
「そうですね…」

松下さんが中高生の様な事を言いながら恨めしげに地面の影を睨みつける。

「もし爆発したら、俺は松下さんの隣で松下さんと死ぬんですね」
「…頭可笑しくなったか」
「いえ、それも良いなと思っただけです」

嫌そうに顔をしかめて舌打ちをした松下さんは歩幅を大きくする。仕方なく自分も歩幅を大きくし、小走りに付いて行くと松下さんの赤くなったうなじと耳が見えて、何故だか満足感と第1番目のお金の使い方を思い付いた。
リストバンドを送ったら松下さんは怒るだろうか。




始めの第一歩




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リストカット=リストバンドは、あれか、駄目なのか
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