しますぐ



ペたりと冷たい手が頬に当たり、心地好い。
ふ、と意識がまどろみから一気に現実に引き戻され、パチリと目を開けた。身じろぐと微かにシャランとキリクが鳴り、嗚呼と自分が居る場所を思い出した。

「ぶっ倒れるまでやるド阿呆がいるかい」
「…ぼん、がおる」
「おお、おるで。次いでに水分もあるわ」

軽い熱中症で倒れ、グラグラ揺れた頭と木陰まで引っ張ってこられたのを思い出し、おおきにと言いながら坊からペットボトルを受け取った。青いラベルに白い英字のスポーツドリンクを一気に煽り、半分まで減らした。
ふぅと一息付いて、ちろりと坊を見れば、いつも以上に眉間のシワが細かく増えていた。しまったなと自分の失態に後悔と苛立ちを感じながらキリクを地面に置いた。シャランとまた鳴く。

「坊、坊」
「…なんやねん」
「すんません、ちいと夜更かししてね」

じいっと顔を見て呼ぶと機嫌の悪そうな声が返ってくる。
言い訳がましいと自分でも思う。ふぅと坊にばれない様にため息を付く。

「不衛生、不健康、不真面目」
「すんませんて」
「…ヘタレの虫嫌い」
「それは言わんでぇな」

坊の手を取れば、反対の手でペシンと頭を叩かれた。だが拒否された訳では無いのでお構いなしにぎゅうと握った。

「なん…」
「うん?手ぇ冷たいやろ坊」
「やからなん」

緊張したりすると手が冷たくなると知らないのだろう、首を傾げて自分の一挙一動をじいっと見てくる。その真面目な顔に思わずくすくすと笑ってしまい、更に首を傾げさせてしまう。

「こんな暑いんに、冷たいんはあかんっちゅー話しです」
「…訳分からん」
「分からんでええですよ、俺がしたいだけですから」

ちゅ、と指先にキスをし、顔を伺う。眉をハの字にさせ、耳をじわりと赤くさせる坊にかわえええとぼんやり思う。
キスを指先から形の良い爪、指へ手の甲へと落とし、最後に手首にキスをするとベリッと音がしそうな程顔を引きはがされ、グキリと首が痛んだ。

「っ…なんしてっ…阿呆かっ」
「坊に関しては阿呆でも馬鹿でも構いまへんえ」

首を摩り、今だしつこく握ったままの坊の手を撫でた。いつもより温かいぐらいの温度にふふと笑いを零し、懲りもせず手の甲にキスをする。直ぐさま顔を除ければ坊の平手が一瞬遅れて降ってきた。
困った様な恥ずかしがる様な、その2つをまぜこぜにした表情を赤くする坊に大丈夫と言った。

「大丈夫大丈夫、もう平気ですえ」
「…阿呆志摩」

今度はパシンと強めに叩かれ、あだ、と間の抜けた声を出す。くっ、と坊が微かに笑った気配に自然と口角が上がった。




心配を埋骨します




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勝呂君が不安定っぽい
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