藍黄
※微エロ
※お兄ちゃんって言わせたかっただけだった



「そう言えばイエロー、もう藍児をお兄ちゃんって呼ばないのね」
「へ?」
『む、確かに。呼ばないのか?』
「あ、え?」

ドロシーさんの一言から始まり、ゲルハルトの旦那の純粋な疑問を煽った。

「いやぁー、この歳でそれは」
「いつの間にか呼ばなくなっていたんだよな」
「ややこしくなるから出ないでくれよ兄貴」

全くと言わんばかりに溜め息を付きながら俺の肩に手を置いてくる兄貴の手をギリギリと抓ってみるが、全く痛がらない。

「歳って言ってもそんなに経ってないじゃない」
「十分な歳ですって、第一この態でお兄ちゃんは…」
「俺は構わないが」
「俺が嫌なの!」

抓られた手を摩りながら(やっぱり痛かった様だ)、また余計な事を言い出す兄貴をギロリと睨む。

「イエロー、良い事を教えてやる」
「なに」
「人は嫌と言われると言わせたくなるんだ」

にっこりと笑いながら言われた言葉に返す言葉が見つからず、暫く視線を巡らし、自分もにっこりと笑って言ってみる。

「いや、吸血鬼だから」
「そんなので逸らせると思うなよ。ほらよく言うだろ、鳴かぬなら、鳴くまで待とう時鳥って」
「鳴かせるタイプだろう兄貴は!」

思わず言った言葉に更ににっこりと、綺麗な程に笑った兄貴にあれ?と冷や汗が背筋を伝い、ゾワリと鳥肌が立った。

「そうだな、お前が言うならそうかもな」
「い…や…あの…うわっ!」

腰を抱き寄せられ、兄貴の綺麗な笑顔が近づく。肩を押して離れようとすれば軽々と持ち上げられ、何故かその場を離れようとする兄貴に絶句するが、ハッと我に返り、ドロシーさんに助けを求めようと視線を投げると、にっこりと兄貴とは別種の綺麗な笑顔で「いってらっしゃい」と手を振られた。

「い、いやだああああぁぁぁあっ!」

パタンと慈悲も無く閉じられた扉に有りったけの思いを込めた叫びをたたき付けた。



額に落ちるキスにびくりと身体が震えた。
顎に触れる程度に手を添えられ、気障ったらしいと奪われた帽子を掴み、被るとくすくす笑う声が聞こえた。
今度は頬にキス、かと思えばベロリと舐めあげられた。何するんだと顔を見れば、舌を出したままでニヤリと笑うので顔が沸騰しそうな程熱くなった。また近づく顔から逃げる為手で顔を押さえ付けた。

「や、めっ…!」
「お前には魔法の呪文があるだろう?」
「何が魔法の呪文だよっ!」

兄貴は押さえ付けた手をまたベロリと舐め、軽く噛む。ピリッと痛みが走り、離そうと慌てて手を引けば逆に搦め捕られる。手の甲を舐め、手首にキスされ、指を噛まれ、その度に息が詰まり、目をきつく閉じてしまう。
不意に手からの緩い愛撫が無くなり、疑問に目を開ければ、兄貴の黒い髪が目に入る。なんだと身をよじって兄貴を見れば、肩に頬をつけて嫌に上機嫌でニコニコ笑っている顔が目に入った。

「なんだよ…」
「いや、手だけでも気持ち良さそうだな、と思ってな」
「…!ちがっ…!」

言い終わると同時に首に吸い付かれ、浅く噛まれる。片手は捕られ、背中に壁、首を噛まれて逃げに徹する事が出来ない。つぅ、と唾液が首を伝って鎖骨まで落ちる感覚に小さく息を詰めた。どうにか止めさせ様と身体をよじり、少しの隙間を開ける。と、兄貴の膝がぐりっと足の間に入り込み、いきなり弱い部分を膝で刺激を与え始めた。

「なっ…!あに、きっ」
「なぁイエロー」
「なん、やっ…ちょ、だっ!」
「何でちょっと勃ってたの」
「−っっ!」

耳に囁かれた言葉が一気に顔と共に身体まで熱くする。
絶望にも似た感情に呆然と兄貴を見詰めるとまたくすくす笑ってキスをしてきた。深いそれは全部を奪う様で、ジワジワと溢れさそうともする。

「う、…んっ…」
「キス、好きだな」
「え、ぅ…?っ!」
「あれを言わないのか?なぁ、イエロー、止めるか?」

いっぱいいっぱいの思考の中で、今止められるのは困るなぁと冷静な自分が言う。
また膝で刺激を与えられ、つい兄貴の首に腕を回して縋ってしまった。

「あっ、んんっ!も、何でも良い、からっ!したい…!」
「…おねだりも良いけどあれが聞きたかったな……」
「っさい!馬鹿っ!う、んっ…!へぇ、んっ、たい…!」
「はいはい、じゃあ、何言えば良いか分かるな…?」

顎に手を添えられ、口に指が入れられる。軽く舌を押さえ、楽しそうに笑いながら優しく「言えるな?」と問い掛けて来る。
暫く渋った後、兄貴の指を軽く噛み、小さく頷くと咥内を撫でて指が抜き取られた。

「言って」
「う…」
「イエロー」
「お…にぃ、ちゃ…」

なんだこの緊張。
だって、いや、なんか好きとか愛してるとか言うより遥かに恥ずい。
顔から火が出そうだ。
頬に添えられた手を掴んで離させる。きっと熱が手に伝わっている。

「も、言わね…」
「ああ、そうか、うん」
「煩い」
「ごめんな、よく出来ました」
「子供じゃない」

だから、と胸倉を掴んで思いっ切り引き寄せる。額がぶつかる直前に兄貴が壁で自分を支えたからぶつからなかったが。近付いた顔はやけに幸せそうだったからもう一回言おうかと絆されそうになった。

「出来れば早急に欲求を解消しろ」
「人に物を頼む態度じゃないが、大事な大事な弟の頼みは聞いてやらないとな」
「日本人の美徳を何処に置いてきた」
「オブラートなんて必要無いだろ?」

顔色だけで分かるんだから。




お兄ちゃん!




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何処から可笑しくなったって最初から私の頭が可笑しかったんだよ
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