赤四木
※学パロ



がりっと咥内から聞こえた音に赤林は緩く眉間にシワを寄せた。ジワジワと血の味が広がる。それでもこの手もこの口も離す気は全く無い自分自身に呆れ、自嘲した。

「長い」
「うーん、相変わらずドライだね四木ちゃん」
「黙れ変態」

長い口づけの後四木はここぞとばかりに微笑みながら赤林の顎に手を掛けて押し返す。ぐきっと嫌な音を自身の首から聞きながらにへらと赤林が笑うと心底不愉快だと言わんばかりの顔で手にしていたシャープペンシルを構えた。
流石にシャープペンシルで刺されるのは勘弁、と後ろに下がり、両手を上げると四木はチッと舌打ちしながらグシャグシャになった書類を伸ばした。

「さっさと仕事してください会長。ご褒美にキスさせてあげますから」
「えっ?!やっ……、それは地面と、って言うオチだね四木ちゃん」

さらりと言ってのけられた思わぬご褒美報告に赤林は手放しで喜ぼうとしたが、はたと今までの四木の機嫌が走馬灯の様に脳裏に駆け巡り恐る恐る尋ねた。

「…チッ……それは会長の仕事次第で」
「わあ今なら四木ちゃんの心の中がくっきり見えるー。これが以心伝心かぁ…」
「ふざけた事言ってると不能にしますよ」
「さっきより明らかに体罰が酷いっ!」

舌打ちをした四木にやっぱりなとさめざめと泣くフリをしていれば格段に上がった男としての死を突き付けられ渋々と会長の椅子に座った。目の前にある積み上げられた書類に赤林のやる気は出る所か一気に急下降していく。だが四木からの罰を受ける訳にはいかない為書類を数十枚取り、さっさと目を通していく。
そんな赤林の様子にようやく自分の仕事が出来ると、四木は伸ばした書類を机の端に積んだファイルの一つに挟み、その端に日付を書いた。

「その日付って意味あるの?」

顔を上げて赤林を見ればたったあれだけの短時間で軽く二十、三十枚は処理された書類を持ってコチラを見ていた。恐らく純粋な興味なんだろうと思い、四木は何故かと考えた。

「…癖、でしょうか」
「癖かー。何、日記でも書いてた?」
「ああ、そうですね。あと観察とか、収集とか…」
「あー、楽しそうだねぇ」

確かそれら一つ一つに記録していたなと四木は思い出し、本当に楽しそうだと今にも実行しそうな赤林に笑いそうになった。

「お、何々?四木ちゃんが笑うとか」
「いえ、堪え性の無い貴方には無理だなと…くっ…っ」
「しつれーだねぇ、意外と出来ちゃうかもよー」
「答案用紙に名前書き忘れる人には無理ですって」
「えぇ?!何で知ってんの?!はっ!青崎さん、青崎の奴だろ!!」
「秘密ですね」

ガタガタ椅子を揺らしながらくそうと呻く赤林はそんな会話の中でも器用に書類に目を通し、今日提出分を終えようとしていた。器用だなと感心しながら四木も会話の中で今日の分を終わらせていた。

「青崎も教科書無くす癖に…!」
「赤林さん」
「お、四木ちゃんも打倒青崎に」
「いやそっちじゃなく」

書類を全部ファイルに入れて長机に置いた四木は備え付けのソファに座りながら自分の隣をとんとんと叩いた。その意味が暫く理解出来ずにキョトンとしたが数秒掛けて脳にゆっくり咀嚼させ理解した途端椅子が倒れるほど勢い良く立ち上がった。

「え、…や、え?マジで?」
「ご褒美って約束ですから。どうせもう今日の分終わったんでしょう?」

ニヤリと挑発的に笑った四木に、これは一生掛けても勝てる気がしないと赤林は顔を引き攣らせながら四木の隣に座り、どちらからともなくキスをした。




負ける気しかない負け犬




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赤林さんはヘタレと男前を行き来する人だと思っています。
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