Clap
ぱちん、と手を叩く音で、俺は目が覚めた。
ゆらよら漂う意識を一気に引き上げられた不快感に目の前で笑う男を見る。
「起きたかい?」
「最悪な目覚めだ」
「あはは、良い顔だね」
糸目の男は機嫌が良さそうに鼻歌を歌い、またぱちん、と手を打ち鳴らす。
「沢田さん五月蝿いせー」
「君はさん付けはするのに敬語は全く使わないねぇ」
「敬語の漢字を思い出せ。敬う語りだぞ。犯罪者に敬えるほど、俺は甘くも優しくもない」
「減らない口だねー」
クーラーが無い部屋でスーツをキッチリ着ている沢田はその場で一度くるりと回り、くすくす笑う。
くすくすくすくす。
嗚呼五月蝿い。
両腕にそれぞれグルグルと何重にも巻かれた鎖を見る。その鎖は壁に打ち付けられた杭でそれぞれ繋がれている。
「俺を誘拐してどうすんの」
「ドッキドキの監禁生活堪能するよ」
「…冗談?」
「どうだろう」
こて、と首を傾げてみせる沢田に深いため息をついて、ボロボロの壁から覗く青空を眺めた。
無計画犯行実行者から被害者へ