数え切れないほどのキスで

 










「…今日は、ルイが生まれた特別な日だよ」








「……そっか、今日は生誕祭だっけ…」








「そ、そっち…?ルイの誕生日だから、生誕祭が開かれるんだよ」










アンは困ったように眉をハの字にして、少々呆れながらも肩を揺らして笑う。










「でも良かった。その反応だと、私が一番最初におめでとうって言えたってことだもんね」








「ありがとう、アン。嬉しい」










ルイは、アンの気持ちに心がじんわり温かくなって満たされていくのをはっきりと感じる。

込み上げる愛おしさを伝えたくて、アンの額に口づけた。










「ルイ」










アンの声が自分の名前を呼ぶだけで、嬉しくて愛しくて胸が締めつけられて…たまらない気持ちになる。

こんな想いを抱いたのはアンが初めてで、幸せすぎてちょっぴり苦しい。

自分勝手な感情に半ば呆れつつも、ルイはひとつ胸に決めた。






チュ……


ルイはアンの頬に手を添えて、優しく唇を重ねた。










「ルイ…?」










チュ……


アンが名前を呼ぶと、ルイは嬉しそうに口元に笑みを浮かべて、またキスをする。










「ん…、ルイ…」










アンが頬を染めてくすくす笑えば、ルイはまた、愛おしそうにアンを見つめた後キスを落とす。










「今日は、名前を呼ばれたら、キスで返事することにした」








「っ…、なにそれ」








「特別な日、なんでしょ…?だから、もっと呼んで。もっと…キスしたい」








「……今日だけ、だよ?」








「……………」










考え込む素振りを見せるルイを見て、アンが可笑しそうに笑う。





さっきルイが胸に決めたのは、この事。


キスで返事なんて、自分の甘えっぷりに心の中で苦笑しつつも、今ある幸せに身を浸すように目を閉じた。










「今日は、ルイのしたいこと、なんでもしてあげる。ルイが産まれてきてくれたお礼」








「お礼…?」








「だって、産まれてきてくれなかったら、ルイに出逢えなかった。ルイに逢えなかったら、こんなに人を愛おしいと思う気持ちも知らなかった。だから、お礼」










アンの穏やかな声が確かな温もりとなって胸に沁み込んでいく。

ルイがゆっくりと目を開けると、温かくて優しくてなんだか眩しい…アンの眼差しがそこにあった。










「…そんなこと言われたの、初めて。ありがとう、アン。俺もアンと出逢えて、本当に幸せ」










ルイは目の奥に込み上げる熱いものを隠すように、アンの首筋に顔を埋め、抱きついた。

抱きしめ返してくる腕があまりにも優しくて、顔を見なくてもアンが微笑んでいるのが分かる。










「こんなに誕生日が特別で幸せな日だって、教えてくれてありがとう」








「…ルイ」








「君を愛して…君に愛されて、俺…死ぬほど幸せだよ。……抱いても、いい?」










返事を求めて身体を離し、アンを見ると、恥ずかしそうに下唇を噛むアンが見つめ返してきていた。


そんなアンに、さっき名前を呼ばれた返事、とキスを落とし、額に額をくっつけて至近距離でアンの瞳を覗き込んだ。





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