キスとスキ
公務をひとつ終え、次の公務までの時間を過ごそうと温室を訪れた。
暖かなその場所は、たくさんの緑や花に彩られて、沈んだ心にも温かな光が射し込むように感じる。
アンはいつものベンチに腰掛けて、ぐうーっと背伸びをすると、見上げた先に自分を覗き込んでくるルイの顔があった。
「ルイ!?」
ルイはクスリと微笑んで、アンの隣まで回ってくると同じくベンチに腰掛けた。
「…元気、なさそうだったから」
「え……」
「何があったかは聞かないけど…アンには笑っててほしいから」
そう言ってルイはベンチに置かれた小さな手に自分の手を重ね、アンを覗き込むように顔を傾けた。
そして、チュ…と触れるだけのキスをした。
ルイが重ねた手に、アンの手がピクリと反応したのが伝わる。
「…俺は、アンとキスすると、嬉しくて笑っちゃうから…アンも同じだといいなと思って」
ルイはアンを覗き込んだ角度のまま、はにかみながら言う。
徐々に赤く染まっていくアンの頬を見て、ルイは笑みを深めた。
「……ありがとう、ルイ。そういうところ、好きだよ」
恥ずかしそうに、睫毛を伏せて呟くアンに、ルイは再び顔を寄せ、そっと唇を触れ合わせた。
「好きって言われても、キスしたくなる」
「っ…もう」
「…アンは、嫌?」
「そんなわけ、ないよ…。ただ……」
「…?」
「キスされたら、嬉しくて…もっと好きになっちゃうから」
「……っ」
「でも、私がまた好きって言ったら、ルイはまたキスしたくなっちゃうんでしょ…?」
「…そう、だね」
ルイは微かに頬を染め、俯いているアンに更にキスを落とした。
今度は離れるのを惜しむように、アンの唇をやわやわと挟んでみる。
アンの唇が開いた隙に、角度を変えて舌を滑り込ませた。
「…ん……っ、ルイ……」
「………ん…」
「…は…ぁっ……待っ、て」
夢中になっていつの間にか腕の中に抱きしめていたアンに胸を押されて、ルイは名残惜しげに唇を離した。
「どうしたの…?」
「…これじゃ、ずっと繰り返しで…終わらないよ?…私の好きと、ルイのキス」
アンの言葉に、ルイは目を丸くして一瞬動きを止めた。
「………ルイ?」
アンの呼び掛けに、ハッとしたように肩をすくめて、ルイは笑った。
「アンとなら…それもいいかも」
「……永遠に?」
「うん。永遠に」
そして二人は顔を見合わせて笑い合うと、引き寄せられるようにまたキスを交わした。
本当にこんな時間が永遠に続けばいいのに、とそれぞれ同じ想いを抱きながら、二人は幸せそうに目を閉じた。
-END-
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