ひと夏のマーメイド

 


「アン、可愛すぎ。…周りに誰もいなくて、良かった」









ルイが耳元で囁く。

それだけでアンの体は熱を帯び始める。



その時、お腹に回されていたルイの手が、悪戯にくびれをなぞった。









「ぁ…、…っ」








「…そんな甘い声、出さないで。俺が我慢してる意味、なくなる」










そう言って、ルイはアンの耳に、髪に、うなじに、肩に…キスの雨を降らせていく。

時折吸い付いて小さく水音を立てながら、アンが息を詰めて浅く熱い呼吸を繰り返すのを聞いていた。










「…ん、…ルイ……」









キスを受け止めながら、アンがルイの腕の中で向きを変える。

向かい合って抱きしめ合うと、アンの熱を孕んで揺れる瞳が、ゆっくりとルイを見上げた。



ルイはまたしても喉をごくりと鳴らすと、込み上げる衝動のままアンの唇にキスをした。









「…ん……っ」









何度も何度も、触れては離れ、飽きもせず、熱に浮かされたアンの表情を見る。

少し開いた唇が、まるで誘い込むように濡れていて、ルイは吸い寄せられるようにキスを繰り返す。









「ル…っ、イ…」









キスの合間にアンが呼ぶ。

ルイは小さく笑って、またキスをする。








「待っ……」








まだ言葉を紡ごうとする諦めの悪いアンの唇を塞ぐように、今度は深く、口づけた。


呼吸をも奪ってしまいそうなほど、深く。

絡め取る舌は、どこまでも熱い。








ひとしきりアンとのキスを堪能し終えてルイが顔を離すと、アンがルイの首に腕を回し、ぎゅうっと抱きついた。


必然的に二人の胸が重なり合い、いつもより隔てる物の少ないそこから鼓動が共鳴する。











「…アンの胸、やわらかい」









「……ルイのバカ」









「……アン」











ルイはアンの髪を唇で挟んで避けさせ、耳元に吐息だけで囁いた。









――…『アンが、欲しい』












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