02


「どうぞ」

トキヤは掛け布団を捲りあげて真斗を招き入れる。
真斗は、布団にはないふかふかした感触を楽しみながらおずおずと遠慮がちに入ってきた。
大きな枕を二人で半分に分けて、布団を鎖骨の辺りまでかけて。
何故か気恥ずかしいような、そんな気持ちになりながら二人は顔を見合わせて笑った。

「深夜の2時に私達何してるんでしょうか」
「本当だな…!ははっ、全く…」

二人でくすくすと笑いながら、音也の方を気遣って視線をやる。
しかしら彼は美味しいものを食べる夢でも見ているのだろう。
むにゃむにゃと言いながら寝返りを打っているので大丈夫そうだった。
トキヤはさり気なく真斗の肩に手を置いて言う。

「狭くはないですか?大丈夫ですか」
「あぁ。大丈夫だ。布団からも枕からも一ノ瀬の匂いがして、不思議な気持ちになるものだな」
「っ、聖川さん!」
「どうした」
「い、いえ…。臭い、ですか」
「とんでもない。上手くは言えないが、一ノ瀬の匂いだ。…例えるならば上品で優しい感じだ」

トキヤの枕に頭を無邪気に押し付けて、真斗は笑う。
それを見て、トキヤは思った。
真斗は、どれだけ周りに守られ、純粋に生きてきたのだろうか。
これは確かにレンがいい加減にしてくれと頭を抱えるほどだ、としみじみ実感する。
末恐ろしくなるほど、真斗は純朴で、まっさらだった。
普通、二人きりでいるときにそんなことを思ったままに口にすることなどあり得ない。
真斗が女であったならば、直ぐに男に騙されて襲われていたのでは、と思う。
真斗があまりに恥ずかしいことをさらりと口にしたせいて、トキヤの理性はあえなく崩壊を迎えてしまった。
男の劣情を舐めてはいけませんよ、とトキヤは小さく瞬きをして、真斗の腰を強く抱き寄せた。

「っ!?」
「ねぇ、聖川さん。私…確かに寂しいのかもしれません」
「あ、あぁ」
「あなたが、隣で寝ていてくれるだけでも十分ですけど…私、せっかくなのであなたと温かみを分かち合いたいと思いまして」
「なっ、一ノ瀬!」
「しっ。…音也が起きますよ」

私を眠りに就かせてください、と耳元で囁き、トキヤは真斗の胸元に手を差し入れた。
真斗はびくりと体を震わせたが、ぱっと口元を手で覆う。
自分の部屋にしたのは正解だった、とトキヤは小さく微笑んだ。
レンと真斗は遠慮のない関係だ。
真斗の上げた声でレンが起きてしまえば非常に気まずい。
しかし、真斗はやさしい人間だ。
音也を起こさないように、と精一杯声を抑えて堪える姿が可愛らしい。

「良い子ですね」

そっと耳元で囁き、真斗の胸元の紅い突起を指で触る。
ひっ、と真斗が息を詰めたのを聞いて、トキヤは思わず微笑んだ。
襟元を乱して、胸元を大きく開ける。
真っ白な雪のようなきめ細かい肌が見えて、がっと下半身が熱くなるのを感じた。
それまでは流されていた真斗も、何をされるのか感じ取ったのだろう。
手で着物を抑え、トキヤに反抗する。

「おい、一ノ瀬!」
「はい」
「や、やめろ!こんなはずではかっただろう?」
「ごめんなさい、最初に謝っておきますね」
「い、一ノ瀬、っ、」
「でもその代わり、あなたはちゃんと寝せてあげますから」

引きつった表情の真斗ににっこりと丁寧に笑い掛けたトキヤ。
それがどういう意味なのかも分からないまま、真斗は困ったようにトキヤから視線を逸らす。
先ほど光の下で会った時、真斗の目の下にははっきりとした隈があった。
恐らく、本当にここ最近眠れていないのだろう。
確実に寝せてくれるなら、と多少のことには目を瞑る気になったのだろうと判断したトキヤは遠慮なく着物を乱していく。

「恥ず、かしい…」
「部屋は真っ暗です。大丈夫、誰も見ていませんよ」
「お前が、」
「私はいいでしょう?」

トキヤは余裕たっぷりにそう笑うと、鎖骨を指でなぞる。
くすぐったいような、じれったい様な。
そんな感覚に身悶えして、真斗が体をよじる。
可愛らしい仕草だ、とトキヤは笑った。

「な、」
「あぁ、いいのですよ。それは生理的なことです」
「一ノ瀬…!」

やめろ、恥ずかしいとうるさくなりそうだった真斗に顔を近づけて、トキヤはく唇を奪った。
そんなことを言われても、トキヤとて年頃。
止まらないのだ。
太腿を撫で、片手で蕾を弄りながら角度をつけて真斗の口腔までもを犯していく。
慣れない刺激と、初めてのキス。
真斗はそれへついていくことにも大変で、ただトキヤにされるがままになっていた。
身を任せていれば、トキヤから沼のように深い快楽が与えられる。それは底なしで、真斗がもっとと強請れば強請るほど深みへ落ちていくのだ。
抗わなくては、と思うのに、体は正直なのか口元から酷く淫猥な声が漏れた。




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