to YOU!!


「真ちゃん!」

高尾が声を張り上げ呼んだのを聞いて、緑間は驚いたように体をびくつかせた。
上げられた顔は、涙でぐちゃぐちゃになっている。
俺がたったひとつの居場所を奪っちまったんだな、と思うと同時に、これでよかったんだとも思った。
緑間真太郎と言う人間は、あんな小さくて汚い箱庭の世界で生きて行かせるわけにはいかない。
純粋で、まっすぐで、努力家で、少し天然。
我儘なところもあって、素直じゃないところだってあるけれど、いつでも一生懸命だ。
そんな若い緑間の未来を、捻じ曲げるようなことはしたくない。
微温湯に浸ってずるずると生きる、自分のような人生にはなってほしくない。
緑間と出会うことで彼が高尾へ魅せてくれた輝く明日を、これからは高尾が少しずつ見せていきたい。
自分を再び光の下へと連れ出してくれた緑間が、好きだ。

「真ちゃん…こんなところで一人で泣かないでよ。…俺が、迎えに来たよ」
「…っ、高尾、だけど、…俺は、もう…」
「ね、真ちゃん。…これからは俺が守るよ。悲しいことがあっても、一緒に乗り越えていこう」

真っ直ぐに自分を見つめ、ぶつけられたその言葉。
その真摯な響きに緑間も気付き、狼狽えながらも言葉をしっかり聞き取った。

「たか、お…?」
「好きだ緑間。…楽しい毎日を教えてくれた真ちゃんと、これからもどうしてもずっと一緒にいたい。…お前の為にホストもやめた。これからは、ちゃんと真面目に働くよ。だから…お前もホストになりたいなんて、言わないで。ちゃんと夢を叶えて」

そう言うと、緑間の表情がまたくしゃりと歪んだ。
色んな感情がごちゃ混ぜになって緑間へ襲い掛かってくる。
悲しみ、喜び、不安。
それらを全て任せろと言うように、高尾は緑間を抱きしめた。

「好きだよ、真ちゃん。…俺についておいで」
「っ、高尾、は、俺の…傍に、いてくれる、のか」
「あいつらだって、…真ちゃんが憎くてあんなこと言ったんじゃないよ。お前に幸せになって欲しいからだよ。だから、ちゃんと夢を叶えて会いに行ったら歓迎されるよ」
「本当、か」
「当たり前。だってあいつらと真ちゃんは、友達だろー?あったかい居場所、出来たじゃん。…だけど、ほら、…それだけに甘えたら、お前はいつまでも成長できないだろ?」高尾の言葉に、緑間がはっとしたような表情になった。
本人も薄々分かって居たのだろう。
こくんと素直に頷き、高尾の体にしがみ付く。
これは、真っ暗な世界で一人泣いていた自分を、見つけてくれた人だ。
寂しい、辛い、そんなことも言えずにただ蹲っていた自分を、立たせてくれた人。
願いを叶えてくれた人。
愛を教えてくれた人。
あぁ、自分は高尾から、沢山のものをもらっているではないか。

「お前に出逢って、もう、一年が経ったのだな」
「だね」
「あの日、お前に出逢えて、よかったのだよ」
「俺も…お前のこと見つけられて、本当に良かったよ。…だけど、俺と真ちゃんが出会えたのはきっと、運命なのだよ!だから、いつだって俺はお前を見つけられる」
「っ、真似を、する、な」
「ほらぁ、泣かないの」

またぐずぐずと泣きだした緑間を、高尾は笑った。
昨年自分が短冊へ書いた願い事は"一人で泣くあの子を、いつかもう一度、俺が見つけ出せますように"だった。
それを、こんな日に叶えてくれるなんて、織姫と彦星も粋なことをするじゃないか。
高尾ペンと紙を差し出し、緑間へ言う。

「またこれ、書かない?」
「…あぁ」
「毎年、一緒にこれを書きに来ようよ」
「あぁ…!」

嬉しそうにそれを手に取って、緑間は勢いよく書き出した。
ちらりと盗み見すると、この気持ちがいつまでも変わりませんように、なんてかわいらしいことを書いているではないか。
緑間のそんな姿を見ているだけで、温かい気持ちになる。
人を好きになるって、こういう事だったんだ。
高尾は少しだけ考えてから、こう書いた。
“独りで泣いていたあの子を、これからは俺が、ずっと、笑わせてあげられますように”と。

家へ電話をして、今日は友人の家に泊まると嘘を吐いた緑間は高尾の家へ上がっていた。
何度か足を踏み入れたことはあるが、こうして夜に来るのは初めてのことだ。
かちかちに緊張している緑間を見て、高尾は笑った。

「取って食いやしねぇって!」
「な、」
「そうだ、真ちゃん。…お前からのお返事をまだ、聞いてないんですけど。俺は緑間真太郎君のことが、こーんなに好きなのに」
「っ、その、あの…俺も、高尾が、すき、だ…」

顔を真っ赤にして、ベッドの上で俯いてそんなことを言う。
襲ってくれと言わんばかりの姿に、高尾は思わず口元を覆った。
乱れた恋愛ばかりをしてきたからか、こんなかわいらしいやり取りに胸を撃たれた。
ベッドサイドに置かれた時計が、12時を回る。
それを見計らって高尾は緑間を抱き寄せ、キスをした。

Happy Birthday to YOU!!

(運命の君と出会えたこの日は)
(世界で一番の君が生まれた日でした)
(君からもらったこの愛を胸に、これからは生きていきます)
(幸せすぎて笑って、泣けちゃうくらい、幸せにするからね、真ちゃん)

***
ゆき様リクエストありがとうございました〜!
はじめまして、桜子と申します!!
高緑に目覚めてくださって嬉しいです〜!
そんなそんな、新米だなんて…私もそんなに高緑歴は長くないですから二人で新米ダンスでもしましょう(意味不明)
素敵サイトだなんて勿体無いお言葉ありがとうございます!
ゆき様にリクエストをいただかなければ完全に書かなかったかもしれないのでこちらが感謝したいくらいです…!
リクエストありがとうございました!
これからもよろしくお願いします><

***
2014年緑間真太郎生誕祭記念小説でした。
うう、あれからもう一年経ったんですね…早いです。
緑間真太郎の心がキセキの世代から、高尾和成へ移る瞬間もかけて良かったかなぁと思います。
リクエストも、お読みいただいたことも、もうすべてがありがとうございました!
緑間真太郎最高です!!!!!


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