Clap





拍手ありがとうございます…!
いつも励みになっております。
御礼に高緑小説をどうぞ…!!
しかし、病み気味なので苦手な方は注意をお願いします。


俺は昔から、一つの事が気になるとそれに傾倒する癖がある。
視野が広いくせに、と言われるかもしれないけれど、大切なものが出来るとそれだけが気になってしまうのだ。
それがいいところでもあり、悪い所でもある、と小学校の先生には評価された。
例えるならば、花に水をやりすぎて腐らせ枯らしてしまうタイプ、だ。

真ちゃんが好きになって、真ちゃんと付き合えるようになって。
真ちゃんという人間が、チームにとっても、俺の人生にとっても一番大切な人になった。

だからキセキの世代”というものさしと、バスケの天才”という判断基準でしか見てもらえない真ちゃんを、唯一正しく理解出来る人間になりたかった。
周りからの評判を気にしてもいないような顔をして、ただ黙々と練習して。
それでも、押しつぶされそうなプレッシャーを感じていることを、俺は知っている。
奴を縛る、今までの素晴らしい戦歴。
伝説とも言われた、出身中学校を背負って奴は戦っている。
そんなアイツが安心して頼ったり、悩んだり、助けを求めたりする相手になりたかったんだ。

真ちゃんへのこの気持ちが、俺を、緑間を、壊したのだろうか。
ねぇ、と体を揺すってみる。
真ちゃんは何の反応も示さない。
目の前にあるのは、冷たい、真ちゃんの体。
真ちゃんの真っ白な喉に、手形が付いている。
紫色になってしまったそこには、掻き毟ったような跡。
真ちゃんの綺麗だったはずの爪が、剥がれている。

どうしたの、真ちゃん。
その爪は大切なはずじゃない。
俺のシュートは、爪のかかり具合が肝なのだよ、じゃなかったっけ?
だから毎日テーピングまでして、大切にしてたんじゃん。
俺がそれを、毎日巻いてたじゃん。
そう思って真ちゃんに伸ばした俺の手は、ひっかき傷だらけだった。
そっとその手を、真ちゃんの首元に当ててみる。

ぴったり、合う。


「真、ちゃん…?」


返事はない。
首筋に手を当てても、鼓動もない。
躰に温かみさえない。
真ちゃんからは、何一つとして生きている証が感じられなかった。


「はは、…ははっ、俺が…殺しちゃった…」


手を自分の目の前にかざして、へらへら笑ってみた。
何かがそれで変わるわけではないけれど、一種の現実逃避みたいなもんだ。
そう、分かっていたんだ。
俺は今さっき、真ちゃんを殺した。
俺が、自ら、この手で。
こいつの細い喉を締めて、殺したんだ。
どんなにもがいても、止めてくれと騒いでも。
真ちゃんが泣きながら俺の名前を呼んだけど、俺は真ちゃんを離さなかった。

どうしてか、って?
それは、簡単な理由だ。
真ちゃんが、俺と付き合う時に言ったんだ。
必ず俺よりも後に死んでくれるというのなら、喜んでお前の恋人になろう、って。
だから俺は、真ちゃんを何よりも喜ばせてやろうと思った。
真ちゃんが大好きになってくれた俺と離れて一人ぼっちになるのを怖がって、そう言っているとわかったから。

だから、絶対長生きするからね!
真ちゃんのお墓の前で、お花添えたりしてあげるから!
だから、絶対に真ちゃんを一人にしないよ!
お前の傍に、いつだってずっといるから。
俺はそう、約束したんだ。

でもさ、駄目だったんだよ。
頭が痛くて、医者に行ったら診断されたんだ。
貴方の余命は後、三ヶ月でしょう、って。
元気にバスケットボールを追いかけて、シュートをきっちり決めてる真ちゃんが、そんなに早く死ぬはずないじゃん。
でも俺は、あと三ヶ月で真ちゃんの前から消える羽目になる。

それじゃあ約束が、果たせない。
俺は堂々と真ちゃんに嘘を吐いたことになる。
真ちゃんは俺の葬式で、たった一人で泣くだろう。
どうして約束を破ったんだ、どうして俺を一人にするんだ。
嘘つき、大嫌いだ、って。
そんなことになるのは、絶対に許せなかった。

真ちゃんが大好きだ。
世界中の誰よりも愛しているし、大切にしたい。
だから、俺が、お前を守る。
泣かないで真ちゃん、ずっと一緒に居ようって言ったもんね。

俺も、今から逝くから待ってて。
そっちでも絶対、一人になんてさせないから。


(ごめんね、真ちゃん)
(こんな風にしか約束を果たせない俺を、)
(どうか、どうか許さないで)

***
拍手だというのに…悲しい話になってしまいました。
ありがとうございました!



>>なにかコメント頂けたら喜びます。
 お返事が地味に遅いので、気長に待っていただければ幸いです。
 私からのお返事をご希望なさらない方は匿名でも結構です。
 その他の方はお名前をお聞かせいただけると非常にうれしいです。



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -