「まだ帰れないのかな」
「もう、とっくに五分なんて過ぎてるぜ」
互いの体温が離れないように抱きしめ合いながら、その瞬間を待った。
けれど、一向に帰る兆しはない。ベルが唇を寄せる。
「ずっとこのまんまでいいや」
「未来の私はどうするの」
「…もう叶わないから」
「私はどんな事があっても、何を言われても、ベルを嫌いになったりしないよ」
ぎゅうっと抱きしめる腕に力を込めた。
十年経って随分と大きくなった体は、未だに細くて骨張っている。少し違うベルの匂い、香水を変えたのかな。
「私はずっとずっと、ベルを愛してる」
「オレもお前以上になんて愛せる奴いねーよ」
お前が居ればそれだけで充分だ、そう呟いた。
ベルの気持ちが痛いくらいに悲しいくらいに伝わってきて、涙が零れた。
「てぃあーも」
まだまだ下手くそな言葉で伝えると、「ヘタだし」なんて言ってベルが笑った。