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年の暮れを目前に迎えるというこんな季節だというのに、この人はいつも薄着で外出してくる。
そのくせひどく寒がりで、だったら1枚でも多く着込めばいいのにと再三苦言を漏らしてきたつもりだったけれど、こんな日でもやはり彼は軽装のままやってきたようだった。

「だから滝さん、寒いってわかってるんですからちゃんと着てくださいよ」
「え、だってもこもこ着込むのは格好悪いじゃない」
「だからってインナー2枚に薄手のコートじゃ風邪引きます。」
「ほら、今日はマフラーしてきたし」
「自慢げに言わないでください、そう言う問題じゃないです。今日は夜遅くなるんですから防寒はしっかりしてもらわないと…」
「日吉、母さんみたい。」
「…そりゃこんな格好で出かけようとすればお母様も気が気ではないでしょうね。」

俺が滝さんの家の目で出先に薄着を咎められているシーンを何度目撃したと思っているのだろう。
それでも一切着込もうというとはしないこのひとの性格もまた良く知っているのだけれど。

「…仕方ないですね」

右手のダークブラウンの手袋を外すと裸のままの滝さんの左手を包み込む。
冷えて赤らんでいる指先をぎゅっと絡ませ、熱を分け与えるように握り込んだ。

「っ、ひよ、」
「今だけは暖めますから。一度家に戻りましょう」

突然手を握ったことに動揺したのか、滝さんは目を丸く見開いてこちらを見上げている。
酸欠の金魚のように口を半開きにしたこの人はなにか言いたそうだったけれど、俺は構わず手を引いて滝さんの家に向かっていった。


2011/12/31
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