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ーーその昔、「有翼の一族」と呼ばれる種族がいました。

彼らは翼を持ち、大空を自由に羽ばたいていたそうです。

戦いには向かない、平和を好む穏やかな種族で、薬草の扱いに長けていたと言われています。

今ではもう、その存在を知る人はいないでしょう。文献にもほとんど残されていないようです。

彼らはそもそも数が少なかったうえに、血を守るために同族間での婚姻を繰り返したことで、

病弱になったり短命だったり・・・さらにはその希少性や珍しさから、人身売買や人さらいなどにも遭い・・・その数を減らしていきました。

彼らはついに同族での婚姻に限界を感じ、他種族との婚姻を始めたことで徐々に翼は失われていき、いつしか人々に紛れていきました。

・・・同族間でしか、翼は遺伝しなかったようです。

けれどーー

・・・先祖返り、という言葉を知っていますか?

昔の先祖の特徴や体質が、突然現われることを言うそうです。

私はその先祖返りで、羽を持って生まれたようです。・・・確かなことは分りませんが、そうとしか考えられないんです。

私の両親には、有翼の一族の末裔であるという言い伝えがありました。

けれど、父母ともに幼い頃に聞かされたぐらいの認識で、ほとんど忘れかけていたそうです。

でも私が生まれた時、背中に小さな羽があったことでおぼろげに思い出して・・・父も母も、その時初めてお互いの言い伝えを知ったそうです。

二人は私を守るために、家に眠る一族の文献や情報を必死で探してくれました。

それによると、他種族と婚姻を始めた頃、まだ血が色濃く残る時代は、私のような先祖返りもそこまで珍しくはなかったようです。

けれど、もう遥か昔のこと・・・今になって起こるなんて、奇跡的な確率だとそう、言って・・・。

生まれた島でも、このことを知るのは産婆さんだけで、誰にも言わずに私を可愛がってくださいましたが・・・その方ももう亡くなりました。

両親はともに薬師でした。一族の血が、薬師と言う形で受け継がれていたのかもしれませんね。

二人は私の行く末を案じて、知る限りのその知識を教えてくれました。

でも、二人とも事故で亡くなって・・・私はその悲しみに耐えられなかったんです。

思い出の詰まった島から逃れたいのと・・・ずっと心の底にあった、世界を見てみたいという思いが募って、故郷を旅立ちました。

けれどこの時代、私のような女一人で旅をするのはあまりにも無謀であることは分かっていました。

なので、最初は知り合いの伝手を頼ったり、信用できる方の紹介をもとに島々を渡って、逗留しながら旅をすることにしたんです。・・・この羽を、隠しながら。

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