(飽きた)
もう、1人に、なりたくない。
ぱたぱたとこぼれる涙を抑えようともせず、わたしは嗚咽に苦しみながらもそう吐き出した。
青と黄色が特徴的な目の前の彼は、今のわたしを見て、一体どう思うんだろう。そんな疑問の裏側に存在する、確かな恐怖に丸呑みされてしまいそうな予感がして、わたしはぎゅっと目を閉じた。
突き刺さるような視線が怖くて、わたしは目を閉じたままほんの少しだけ俯いてしまう。嫌なの、これ以上傷つけるのも、傷付くのも、苦しむのも、寂しい思いをするのも、何もかもが。
わたしはいつだって我儘だ、それを理解していながら、どうする事もできずにただ涙を流す。そんな、無力な我儘。
最低だ、最悪だ、そんな事は十分理解出来ている。それでもどうする事もできないのは、ただわたしが我儘なだけじゃ、ないから。
わたしが逃げ出す事が出来ないのは、いつだってわたしを苦しめるあの人が存在するから。
そう、目の前の彼にそっくりな――。
「オメー、結局何なんだよ」
「なに、っ…て……」
「一人になりたくなきゃ、逃げなきゃイイだろ」
「どう、いう」
「いつまでも現状に甘えてろ。ンでもってー、オレにソックリ?なユーリとやらにいつまでもいつまでも愛されてろよ」
――それがオメーの幸せなんだろ。
そう続けられた言葉に、眩暈がした。
違う、ちがうの、貴方は何もわかってない。そんな無駄な言葉が喉元まで這い上がる。そんな事を言っても分からないのは当然だ、上手に伝えられないわたしが悪い。そもそも、違う次元の、敵とも味方とも言えない人物が近付く事を許したわたしが悪いんだから。
今わたしが何を言っても、ただの逆上。
何も言葉を吐き出せない自分の無力さに、溢れたのは涙と、ごめんなさいの一言だった。
それが何に対してのごめんなさいなのかは、もう、理解する手段を持たないけれど。
…わたしはどうして、何もできないんだろう。無力な自分が嫌い、逃げ出す事のできない自分が嫌い。素良の隣に立てない自分が、ユーリの呪縛から逃げ出せない自分が、いつまでも過去に縛られる自分が――大嫌いで、仕方がない。
「……しあわせじゃ、ない」
「じゃあ何なんだよ。一人になりたくねーんだろ」
「……ユーリが、嫌い、だから」
「……」
「怖い…から、くるしいから、もう、痛い思いをするのは、いや……だから」
「…」
「だから――――たすけ、て……!」
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