ハリネズミ | ナノ
(要素は少ないけどTFSPネタ)
(コナミくんがいる前提注意)
(落ちない)

何て言えばいいのかな。上手に言葉が思い浮かばないの。 ずるい、ううん違う。羨ましい、いいやそうじゃない。わたし、自分の気持ちを伝えるのが下手だから、この気持ちに相応しい名前がつけられなくって。
赤色の帽子の彼に名前を呼ばれるのは、好き。素良とあの人と一緒に歩いて、タッグバトルをして、少しだけでも笑ったりするのは、とっても好き。
けど、素良とあの人が仲良くしてるのは、少しだけもやもやするの。上手に笑えなくなって、ぎゅって自分手を握って…。こういう気持ち、何て言うのかな。
素良はわたしに色んな事を教えてくれた。デュエルのやり方、カードの効果、歩き方に笑い方に、目の閉じ方に色んな事。けど、こんな風にもやもやする気持ちを教えてくれた事は、一度もなかった。
ただ何でもない場所で水色と赤色が一緒にいて、わたしはそれを少し遠くから眺めて、どうしてか、泣きそうになって。
素良がわたしを蔑ろにするのが嫌なんじゃない。あの人が嫌いな訳じゃない。
素良が楽しそうなら、わたしはそれでいい。あの人が楽しんでいるなら、きっと素良も楽しい筈。素良がいいなら、それで良いんだ。それが一番。
こうして三人で居られる現状で、わたしは十分すぎるほどしあわせだから。
幸せな筈、だよ、ね。

「ねえ、素良」
「ん、なあに?」
「わたし今、笑ってる?」

あ、凄く驚いてる。素良がそういう顔するの、珍しいなあ。なんだか嬉しくなって、少しだけ笑っちゃった。
「どうしたの、そんな急に」
いつもの笑顔、消えてるよ。
そうは思っても、その気持ちが声になることはない。ごめんね、本当の事を言えなくて。
当たり障りのない返事をすれば、素良はすぐ嫌そうな顔をする。けど、それ以上は追求しない。
ずるいよね。わたしはこんなに素良の事を知りたいのに、素良はわたしの事を知ろうとしないの。
ああ、わたし、またもやもやしてる。

「何と無く、」
「……嘘吐き」
「本当、だよ」
「菟雨が不安になる時って、いつも同じ事を言う」

瞬きもせず素良は告げる。そういうつもりはなかったけれど……もしかしたら、気付かないうちに癖になっていたのかもしれない。
「菟雨はすぐ僕に聞くよね。笑ってるか〜、なんて」
「そんなに聞いてた、かな」
「菟雨が笑ってない時って、大体その質問してるもん」
「……気付かなかっ、た」
拗ねた顔。少しだけ頬を膨らませて、そっぽ向くの。こっち向いて、なんて我儘言える筈なくって。そしたらまた、もやもやが増えていく。
我儘なわたしは嫌いかな。同じことしか言えないわたしは、駄目かな。
「……ごめんね」
――何に対してなのかは、素良が決めて。
そう続ければ、素良は嫌そうな顔をして。そんな顔して欲しいわけじゃ、ないのに。上手に気持ちが伝えられないや。


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