ハリネズミ | ナノ
「菟雨のお腹って白いよねえ」
「そう、かな」
「うん。白くて薄くて……ホワイトチョコみたい」

そういって、素良はわたしのお腹を撫でる。お腹に顔を近づけて擦り寄る素良は、なんというか子供みたい。実際に子供なのだけれど。
妊婦さんのお腹が気になる子供っていう表現が正しいのかな、たぶんそんな感じ。わたしは妊婦さんじゃないし、お腹に何もないのに変なの。けど素良がそれで満足ならそれでいい。
ぺたぺたとわたしのお腹を撫でる素良は、なんだかとっても幸せそうな顔をしている。嫌じゃない、嫌じゃないけれど何となく変な感覚。
もぞもぞするような、むずむずするような違和感は言い出さないまま素良はわたしのお腹から顔を上げた。

「むずむずした?」
「うん」
「そっかあ、ふふ」

わたしの返事を聞いて素良は幸せそうに笑う。その余りの笑顔に思わず目を瞬かせれば、わたしの頬に素良のキスが降ってきた。
今日の素良は変だよ、なんて普通の言葉をかければ曖昧な返事しか帰ってこない。
どうしてそんなに上機嫌なの、そう呟くように質問すれば不思議な笑顔のまま素良はわたしのお腹に手を当てた。

「菟雨の身体がね、僕のこと好きだーって言ってるんだ」
「わたし、素良のこと好きだよ」
「違うよお!菟雨のお腹、赤ちゃんが産まれる場所」
「……素良にはわかるの?」
「うん、分かるよ。だって菟雨は僕のだもん」

素良の中のなにかがぐるぐる回ってる。気持ち悪いものでもあるし気持ち良いものでもある何か、多分それが素良の愛。
素良はわたしよりもずっと賢いし、ずっと先のことが見えてる。羨ましいとも時には思う、けれどそれがわたしと素良の明確な違いだ。
愚図でのろまなわたしのことを見捨てないでくれる素良が何処までも大好き。気紛れで意地悪で、時々怖いところもあるけれど、それでもわたしには素良しかいない。
だから、わたしは素良の言うことだけ聞いて生きてる。

「あのね、いつかここから僕の子供が産まれるんだよ」
「こども?素良とわたしの?」
「うん!素敵でしょ?」

少し嫌だなあ、そう思って表情を曇らせる。
子供が出来て素良がとられたら嫌だし、それを愛せる自信も気持ちもないから。
わたしは悪い子供だ、素良以外の人間以外いらないと思ってる。それくらい素良のことが好き、素良以外わたしにはない。
もしも双子だなんて枷がなかったら、わたしはどうなっていたんだろう。幸せだったのかな。そんな夢みたいな話ある訳がないのに。
双子だから大切にされている。双子だから素良に愛されている。
双子だから、家族だから必要以上に素良のことを好きになっちゃいけない。

「早く大人になってね。僕わざわざ待ってあげてるんだからあ」
「……うん、わたし大人になる」
「そしたら僕たち、幸せになれるね」
「……なれたらいいね」


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