text | ナノ
 ||| 三和くんと雨の日


「雨、止まないね」

何と無く呟いた言葉に意味なんてない。
あるとすれば、ただ寒いとか早く止めばいいのにとか、そういうこと。
ぽたりぽたりと降り続ける雨に皆うんざりしているのだ。
カードキャピタルに来た時はあんなに晴れてたのに、なんて傘を持たなかった自分に後悔の言葉を突き刺してノーガード宣言を突き出した。
相手のヴァンガードはG3。ツインドライブでクリティカル2を乗せた状態の〈炎獄封竜 ブロケード・インフェルノ〉はわたしのヴァンガードへと真っ直ぐ突き進み、大きなダメージを与える。
ぱちくりと目を見開く三和を無視してダメージチェック。
一枚はG1のノーマルユニット、二枚目はーー

「ちょ、ちょっとナマエいいか?」
「なに、三和うるさい」
「雨止まないってどういう意味?だったりする?」
「…三和って馬鹿?そのまんまじゃん。早く帰りたい」
「ですよね!!」

うわー知ってた!という声をBGMにして二枚目のダメージチェック。やった、ヒールトリガーだ。
ダメージゾーンに置かれたカードをドロップゾーンに送り、一枚回復。
けれど三和のターンはまだ終わらない、右側のリアガードはスタンドされたままだ。
こちらの手札はG1が一枚、G2が二枚。〈炎獄封竜 ブロケード・インフェルノ〉のスキルで前列左右のリアガードは退却してしまった為、インターセプト可能なユニットは存在しない。
ああこれは負けるなと思いつつも、やはりダメージチェックへと願いを込めた。

「〈ハンガーヘル・ドラゴン〉でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック…出るかなあ」

緊張する手で山札を捲る。ここでヒールトリガーが出てくれればわたしのターン、勝てる可能性はまだある。
ゆっくりと呼吸し、ダメージチェック。
トリガーは………なし。

ふ、と息を吐いてチェックしたカードをダメージゾーンへ送る。
ここで来るとは、G3。憎いやつめー、と渋い顔をすれば三和に眉間をつつかれた。ぐぬぬ、悔しい。
「なにすんの」「あんま皺寄せると櫂みたいになるぞー?」「うえー、なにそれ」
そう言って二人でくすりと笑う。三和の真後ろで櫂がアイチくんとファイトしているが…まあどうせ聞こえているのだろう。当たられるのは三和だからあえて何も言わないまま。

「それにしても雨止まないなー」
「本当だよ、天気予報あんなに晴れるって言ってたくせに」
「ま、そのお陰で久々にナマエとファイト出来たからいいけどなー!」
「なにそれ、ナンパ?」

「ナンパって言ったらどうする?」そう言って真面目な顔になる三和に不覚にもきゅんときた。「そんなこと言ったら殴るけど」というツンツンな返答を忘れずに。
表情に出ている自覚はある、口角がちょっと痛いから。
机に並べられたカード達をあつめ、一つにまとめる。ファーストヴァンガードを覗いて山となったカードをシャッフルした。シャコシャコというスリーブが擦れる独特の音を心地よく感じて、再戦を申し込む。本当は櫂とやりたいけれど…まだアイチくんとファイトてしるみたいだし。
「次は負けないから」「おっ、随分強気じゃねーか」「三和、なんかムカつく」「ひでーこと言うなって!」
けら、と軽く笑って互いの山札を交換する。かげろうのユニットを使用した三和のデッキは…なんというか、三和らしさがあって好きだ。
先ほどと同じようにシャコシャコとシャッフルを繰り返す。三和の方はもう終了したのか、ご丁寧にきっちりと角を揃えて置かれている。変なところで遊びやがって。
互いの山札をセットし、ヴァンガードサークルにG0を一枚伏せる。
さあ、本日二度目のヴァンガードファイトを始めよう。

「スタンドアップ・ヴァンガード」
「スタンドアップ・ヴァンガード!」

私が勝ったら、傘変わりとして家まで送らせてやる。
そんな余計なことを考えながら伏せてあったファイトヴァンガードを同時に表返した。


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