||| ロスとアルバと大晦日
「いやあ今年も終わっちゃうねえ」
暖かく香る蕎麦の香りと炬燵の温度に体が溶けてしまいそうだ。
12月も過ぎれば残りなんてあっというまだ。
気付けば今日は大晦日。
「掃除がんばったお陰で三人でも大の字になれるよ、すごくない?」
「部長の残念な脳と体力にしてはまあがんばった方ですよね」
「ちょっとそれ酷い!」
あ、蜜柑とってー。と告げそのまま横になるアルバは今年最後だというのにやはりマイペースだった。
蜜柑を剥いてからわたしてやれば「流石ロスのお嫁さん!」なんて茶化される。
ムカつくから蜜柑汁を目にぶつけてやった。ざまあみろ。
「というか今年最後だっていうのに二人はいいの?ボクんちでゴロゴロして」
「大晦日だからって二人きりになる義務はありませんよ」
「というか二人きりになったところですることないしねー」
「初詣は?」
「あんな人混み行く気になれませんよ」
つまらないとでも言うかのように頬を膨らませるアルバになんとなく疑問がわくのはわたしだけではないだろう。
何故人の恋愛事情に首を突っ込む。
「そういえばロス達も今年で卒業でしょ?
そしたらうちの部もほんとボクが支えなきゃいけないって思うとちょっと寂しいよなあ」
「部長に一人で部活が切り盛りできると思ってるんですか!?」
「出来るよ!失礼だなあもう!!」
「というか正確には来年だけどねー」
「そ、そうだけど気分的なアレだよ!」
そうか寂しいのか。
先程上がった疑問をすぐに解消して再びテレビに没頭する。
テレビではいま話題のアイドルが恋愛ソングを歌う真っ最中。
毎年恒例の白赤歌合戦も流れで見てはいるが面白いわけでもない。
面白くもないものを見たところで意味は一切ないだろう。
対して面白くもないテレビ。
対して面白くもない学校。
対して面白くもない勉強。
ただ、楽しいのは部活の時間。
毎日遊んで、毎日笑あって、そんな部活が愛しくて楽しくて堪らないんだ。
卒業、したくないなあ。
そんな独り言を聞こえないように呟けば、シオンがテレビの音量を上げてくれた。
さみしいのはアルバじゃなくて多分わたし。
一年が終わるだけでこんなんじゃ卒業の時はどうすればいいんだろう。
それでも、一年という思い出に切れ目をいれるのはとても辛いものだ。
対して面白くもないテレビをぼう、と見つめる。
今年は、楽しい一年でした。
そんな言葉は、白い雪に埋れて溶ける。
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