||| クラレットソードと女神
貴方を愛する者は私一人だけであり、私だけが貴方のことを理解しているのです。貴方の力は私には遠く及びません、だから私は貴方の事を愛しているのです。私は貴方の母であり姉であり良き隣人であり恋人でありその全て。私だけが貴方のことを愛し全てを受け入れ貴方の道を示す事ができるのです。良い子、良い子、私の黒竜。クラレットの名を与えられた鮮血の剣をその手に掲げ、戦場を駆ける姿はまさに黒き騎士のあるべき姿。血に塗れ力のない民衆を裁き、救いを与える姿は神にも等しい絶対的な存在。
力の及ばない何者かが貴方を悪党と呼びました。ですが貴方の事を何も理解していない愚かな生命の声など聞くに足りません。ああ、私の愛しい貴方だけがこの形式と白に塗れ美しいだけのからっぽの世界を真の意味で平和へと導く事ができるのです。
クラレットソード、私の愛する剣を持つ者。貴方の事を愛しています、貴方だけが私の善。全ては私の言葉から始まり、私の言葉に終わるべきなのです。
そうは思いませんか、赤き剣を持つ我が愛しの竜。
貴方を肯定し貴方を受け入れ貴方の全てを抱えるのが私の役目。貴方が私を愛する必要はありません、貴方は私に全てを委ね私の愛を受け入れるだけで構わないのです。そうすれば貴方に全てを指し示し、道を開け、全てを愛しき貴方の元に捧げる事ができるのですから。
貴方はこの惑星の支配者となる。それこそが私の望み見るべき世界。愛しい貴方の紡ぎ出す世界がどんな色か、ああ、早く見てみたいものです。
その為にも貴方は先ず、黄金の騎士を倒さねばなりません。殺してはなりませんよ、分かりますね。私の言う事をよくお聞きなさい。
黄金の騎士は見せしめの為の道具です。貴方の、いえ、我々シャドウパラディンの力を誇示し証明し、今後起きる出来事の布告を行う為の――あの白く目障りな白のを崩す為の、崩壊の一端となるのです。分かりますね?貴方は良い子だから、きっと私の言う事を全て遂行してくれる筈。良い子、愛しい子。私の何よりも愛する大切な黒竜。
超越の能力も、貴方ほどの才能を持つ存在ならば今後も何の障害もなく利用できるでしょう。私の世界はこれで安泰です。
もう間もなく彼らの軍が崩壊する足音が聞こえます、貴方はあの小隊を滅ぼし、遅れてくる一人の騎士を見せしめの道具として半殺しにするのです。分かりますね。私には未来が見えます。大丈夫、貴方が失敗などする筈無いでしょう。私は愛する貴方の事をよく知っているのですから。ほら、早く行きなさい。禁呪を使い彼を苦しめ、かの穢れなき白い聖域へと崩壊と呪いを与えるのです。
力は正義、そう仰ったのは貴方でしょう。貴方が今ここで私に反旗を翻した所で、何かが変わると思いますか?私の愛する貴方は、私の道具以外の何者でもないのです。愛を与えられるだけ喜びなさい、そして私の道具として生きる事を至上の喜びとしなさい。貴方にそれ以外の行為は望まれておらず、認められてもいないのです。貴方の役目はそれだけ。あの聖域から響く崩壊と断末魔を聞く事だけが私の幸福なのですから。
貴方に愛を与えたのは憐れみ故です、それ以上は何処にも存在しません。思い上がる愚かな竜など私には必要ない。ほら、早く動き出しなさい。貴方の身体が、その呪詛に耐えられなくなる前に。
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