text | ナノ
 ||| マルクソウルに出会う


(原型、擬人化、どちらでも)
(落ちない)

お願い事を叶えるんだと言って、あの子は何処かに行ってしまいました。ナマエは目がわるいから、あの子がどこに行ってしまったのかも知りません。大事なもう一人のお友達は、どこか遠くの星へと行ってしまいました。ナマエはどこか宇宙の中でひとりぼっち。さみしいとは思うけれど、大事なあの子の目印になる為にナマエはここから動くことができません。

ナマエは気付いた時からあの子の隣にいて、いつでもあの子がナマエの事を守ってくれました。ナマエの手を引いて、転ばないように道を示してくれる。そんなあの子がナマエは大好きで、隣にいるとなにより安心できました。だってあの子の笑った声は、なによりも綺麗で、優しいから。
宇宙にぼんやり漂うナマエは、あの子の事だけを考えね生きています。途中、知らないひとにぶつかったり、いろんな事に巻き込まれたけど、ナマエはずっと宇宙の中を漂っています。此処にいればあの子がきっと、必ず迎えに来てくれると知っているから。

あの子は言っていました。お願い事を叶えるんだと、言っていました。あの子のお願い事がなんなのかは、分かりません。ナマエが邪魔だから、ナマエを消してほしいというお願いかもしれません。でも、それならそれでナマエは構わないと思っていました。でも今現在ナマエは宇宙を漂っています。だから、あの子はそんなお願い事をしていないのだという事は分かりました。
目の悪いナマエはずっと目を閉じています。目を開けても見えないのなら、閉じていても良いでは無いかと大事なあの子が言ったから、ナマエはもう随分とこのままです。いつからだったかは、覚えていません。

目を閉じたまま、冷たい宇宙の中をぼんやりと漂っています。あの子の温もりが恋しいと思いました。隣にいるだけであったかく、幸せにしてくれるあの子はきっと素敵な魔法使いになる。そんな事を考えていれば、余計にあの子が恋しくなってしまいました。
会いたいです、くるしいです、どうしようもないです。ナマエは一人ぼっちのまま、どれくらいの時間を過ごしたでしょう。


そんな事を思っていれば、背中に大きな物がぶつかる衝撃を感じました。なんでしょう、ナマエはまた何処かおかしな場所に流されてしまったのでしょうか。あの子の目印になるつもりが、宇宙の を漂う星の一つになっていた、だなんてあの子が聞いたらどれ程笑われるでしょうか。考えたら、少しだけ悲しくなりました。でもあの子の笑い声が聞こえるのなら、それもそれで良いのかもしれません。
会いたいなあ。お願い事を叶えて、嬉しそうな声でナマエに話しかけるあの子にまた会いたいなあ。
きっと上機嫌で、嬉しそうで、でも少しだけ揶揄いを含んだ声色でナマエを呼ぶんです。あの子はナマエの名前を呼ぶのが大好きだから。
ゆっくりとしたトーンで、はっきり、でも沢山の優しさを含んで「ナマエ」って――。

「ナマエ、」
「まる、く?」
「会い、たかっ、た」

ナマエの知っているあの子は、こんなに低い声だったでしょうか。こんなに苦しそうな声をしていたでしょうか。一体何があったのでしょう。一体どうして、こんな場所にいるのでしょう。
さっきぶつかったあれはなんなのでしょうか。ナマエは目が悪いから、何にぶつかったのか分かりません。あの子がどんな姿で、どんな顔で、どんな風にナマエの名前を呼んだのかさえ、わから、なくて。


back to top
「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -